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- 馬時京風(ばじきょうふう)
- 馬時京風 池江さん第2回
氏名:池江 敏行(いけえ としゆき) 職業:調教助手(高野厩舎所属) 1962年生、叔父である池江泰郎調教師の開業時から定年退職解散まで調教助手として所属、メジロマックイーン・ディープインパクトなど数々の名馬の調教を担当。今現在は、栗東高野厩舎所属の調教助手。 著書に「真相~ディープインパクトデビューから引退まで今だから言えること」がある。 |
「無敗の三冠馬」
- シンボリルドルフ以来、史上2頭目の無敗での三冠馬誕生なのかとマスコミが騒ぎ立て、普段は絶対に競馬取材などトレセンまで来やしない雑誌や新聞社が来て、ぎこちなく話を聞いてきた!!
正直、ディープインパクトの調教だけで頭の中は“いっぱいいっぱい”で、今まで味わった事のないプレッシャーと戦っているというのに、更に慣れないテレビやラジオや雑誌や新聞社の取材の対応・・・。ファンサービスとは分かっていても、かなり辛かった思い出である。
これが、あの三冠馬になるかもしれないという重みなのかと感じた菊花賞ウィークだった!! - 菊花賞に向けて、ディープインパクト彼自身の大仕事は水曜日の強めの追い切りであるが、僕の大仕事は土曜日の最終調整の調教である。皐月賞、ダービー、そして三冠馬になるための菊花賞、三回目の最終調整なら慣れるはずなのだが、こればかりは何回経験しても回数に関係ないらしい!!マスコミからのプレッシャーもあったが、一番のプレッシャーは我が師匠からの最終調整の調教指示であった。ディープインパクトに限らず、どの馬に対しても調教タイムにはうるさく、早い遅いは1秒たりとも許してはくれなかった。
いつも池江調教師は、強めの調教の度に言ってました「今日の調教は失敗したから、明日やり直せばいいや…という仕事ではないんだぞ!!それを頭に置いて、調教してこいよ!」
どんな仕事でも絶対に失敗は許されないのだろうが、この仕事は生き物相手だけにやり直しはきかない。ましてや、次の日が本番となると尚更失敗は許されない!!池江調教師が、引退解散する日まで最後の最後まで調教指示は厳しく辛い思い出でしかなかったが、常にそういった緊張感のある仕事をさせてもらったからこそ今の自分があると感じています。 - そして、菊花賞の最終調整も極度のプレッシャーの中無事終了し、いよいよレース当日になった!!
- 2005年10月23日の第66回菊花賞。
無敗の三冠馬を見る為に京都競馬場には菊花賞の入場動員レコードとなる13万6701人の観客が押し寄せた。
そして、当然のようにディープインパクトの単勝支持率は79.03パーセントとなり、単勝式オッズは1.0倍だった。当時、完璧な仕上げで文句なしの状態ではあったが、競馬に絶対はないという事を何度も思い知らされてるだけに不安で仕方なかったが、ディープインパクト彼は全くそんな事関 係なかった。
2馬身差をつけての優勝!シンボリルドルフ以来、21年ぶり史上2頭目の無敗での三冠馬が誕生した瞬間だった。 - ゴールした瞬間、何とも言えない今まで感じた事のない精神状態になった自分を今も忘れていない・・・。