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- 馬時京風(ばじきょうふう)
- 馬時京風 赤見さん第3回
氏名:赤見 千尋(あかみ ちひろ) 職業:競馬レポーター 1998年、高崎競馬場で騎手デビュー。2005年、北関東の全競馬場が廃止となり騎手を引退。グリーンチャンネル『トレセンTIME』美浦担当。秋田書店プレイコミックにて、原作を手掛ける漫画『優駿の門アスミ』を連載中。この春、早稲田大学人間科学部に入学。現在、女子大生を満喫中。 |
「競馬の神様 」
- 今週月曜日は、広島県にある福山競馬場へ行って来ました!
旅の目的は、レディースジョッキーズシリーズ(LJS)最終戦を観戦することです。
LJSとは、2006年から始まったシリーズで、女性騎手のみを集めて3競馬場で各2レースずつ戦い、合計ポイントで女王を決めるレース。今年は、盛岡・荒尾・福山の3競馬場で開催されました。 - 今年の出場騎手は6名と、過去にないほど少なかったんですが、逆にポイント大接戦となり、見ごたえのあるレースを見せてくれました。
- 第1ラウンドの盛岡では、名古屋の山本茜騎手・荒尾の岩永千明騎手が勝利を挙げ、岩永騎手が暫定トップで第2ラウンドの荒尾へ進みます
荒尾では、JRAの増澤由貴子騎手・高知の別府真衣騎手が勝利を挙げて、増澤騎手が暫定トップに立ち、他のジョッキーたちもほとんど差がなく続きました。
荒尾当日は、武豊騎手も来場して、例年にない大きな盛り上がりを見せてくれました。ダートグレードより盛り上がったんじゃないかな、と思うほど。改めて、競馬を愛する人たちがたくさんいることを、肌で感じることが出来ました。 - そして迎えた最終決戦の福山ラウンド。
誰もが優勝を狙うこの大一番で、強烈な輝きを放ったのが――今年デビューしたばかりの18歳、北海道の下村瑠衣騎手でした。
初めてLJSに参加した下村騎手は、第1ラウンドの盛岡は6着・4着で最下位通過。「かなり緊張してしまいました…」と言っていたように、リラックスしていつも通りの騎乗をする先輩たちとは違い、一人固くなっている様子でした - 青森出身の下村騎手。この日は地元から盛岡まで、バスで家族や友達が大勢応援に来ていたんです。「みんなの期待に応えられず、とても残念です」と言いながらも、「先輩たちと騎乗出来て、いい経験になりました」と、笑顔も見せていました。
- 続く荒尾ラウンド。北海道競馬は11月17日でシーズンが終了したため、12月1日に行われた荒尾では、久しぶりの騎乗となりました。「返し馬から、感覚がいつもと違いました」と言うように、やはり久しぶりということが大きく響き、5着・6着という成績。他の5人のジョッキーたちから大きく離され、ここでも最下位となってしまいます。
- この時点で、優勝のみならず表彰台に上がるという目標も絶たれました。表には出しませんでしたが、この時の悔しさは相当強かったようです。「今まで経験したことないくらい悔しかったです。このままじゃダメなんだと思いました」。
そして一念発起。自分で福山の主催者に電話をして、攻め馬をさせて欲しいと頼みます。他競馬場での騎乗は、色々なルールが厳しい地方競馬ですが、下村騎手の熱意に押されて了承され、LJS当日は朝3時に競馬場入りして、12頭の調教に騎乗しました。 - 努力の甲斐あって、福山ラウンド第1戦目を逃げ切り勝ち。自身にとって、通算4勝目の勝ち星です。「騎手になってよかったです!!」と、弾ける笑顔を見せてくれました。
1つ勝利して肩の力が抜けたのか、なんと続く第2戦も勝利!別府真衣騎手との叩き合いをハナ差制して、2連勝を決めました。
「ここまでが本当に悔しかったから…、結果を出せてすごく嬉しいです。お母さんが一番喜んでると思うので、早く電話したい」と、うれし涙を流していました。時折、競馬には『奇跡』と呼ばれることが起こりますが…、本当に競馬の神様は存在するんじゃないか、と改めて感じる出来事でした。 - 福山ラウンドを2連勝で飾ったわけですが、前半2場の成績が響き、総合5位。それでも、LJSの短い期間の間に、大きな成長を遂げた下村騎手。
「悔しさをバネにして頑張ったら、嬉しさも何倍にもなりました。ちょっと、勝負師っぽくなれたかな」と、はにかんだ笑顔。まだまだ18歳らしいフレッシュな表情をしながらも、そこには自信に裏打ちされた、確かな瞳の輝きがありました。 - 総合優勝は、高知の別府真衣騎手
2008年に続く2度目の女王奪取です。
同ポイントで第2位となったのは、名古屋の山本茜騎手。
そして3位は、JRAの増澤由貴子騎手でした。 - 残念ながら、来年からLJSはいったん休止されることが発表されました。普段の競馬とは一味違う、華やかな盛り上がりを見せてくれるLJS。そして、女性騎手たちの成長を促してくれるLJS。またいつか、どこかの競馬場で、必ず再開されることを願っています。