若手だからこそ
減量特典のつく若手騎手がJRA・地方から集う「ヤングジョッキーズシリーズ」。
数カ月かけて全国各地の地方競馬場で予選にあたる「トライアルラウンド」が行われ、上位4名が12月の川崎競馬場と中山競馬場で行われるファイナルラウンドに進出できます。
トライアルラウンドは東日本と西日本で分けられているのですが、今週火曜日に東日本のトライアルラウンドがすべて終了。
東日本6場で行われるトライアルラウンドでは毎回全騎手が騎乗するわけではなく、各自2~3場での騎乗となっています。
そのため、東日本トライアルラウンド最終戦となった船橋競馬場では、自分は騎乗していなくて他の騎手の結果待ち、という騎手も。
野畑凌騎手はちょうど船橋の他のレースに騎乗があって競馬場にいたため、ハラハラドキドキしながら他騎手の結果を確認していました。
地方競馬の騎手にとってはJRAで騎乗できる貴重な機会。
これを逃すと、次は馬と一緒にJRA遠征か、リーディングジョッキーになってワールドオールスタージョッキーズに出場か、というさらに高いハードルが待ち受けています。
少し話は逸れますが、JRA賞新人賞を受賞してから、もう一度JRA賞授賞式の舞台に立つまでが大変、という話をJRA騎手がたびたび口にしますが、それに似たものを感じます。
若手騎手だからこそ与えられる機会。
西日本のトライアルラウンドは10月11日の笠松競馬場がラストです。
若いっていいな
先週は2000勝以上を挙げたベテランが集う「ゴールデンジョッキーカップ」
今日は減量ジョッキーである若手たちによる「ヤングジョッキーズシリーズ」の取材でした。
ゴールデンとヤング、ものすごくギャップがあって、その雰囲気の違いも楽しいなと感じます。
ゴールデンジョッキーたちは勝負の世界に20年以上身を置き、トップクラスの成績を残してきた人たちばかり。
レース前はピリッとした雰囲気がありながらも、順位が確定する頃には
「いやあ、あの人はジョッキーレースのポイントの稼ぎ方がうまいよね」と称えたり
「え!そっちは●ポイントしかなの?(笑)。そういえば、ゴールして振り返ったらいつも後ろにいた(苦笑)」
と長年一緒に戦ってきた同士だからこそイジり合ったり、和やかな雰囲気。
対してヤングジョッキーはレース前から盛り上がることが多々。
そこはやはり若者のノリだな、と思います。
私自身が一般人であるがゆえ、ついその常識の範囲内で彼らを測ろうとしてしまうのですが
若いうちはあらゆることで型にハマらず、飛び出しているくらいの方がきっと大成するんだろうなあ
と思いつつ、叔母さんになった気持ちで見つめています。
そのあたりは人生経験豊富な読者の皆様の方がよくご存知だと思うので、お知恵を拝借したいです。
あとやあっぱり思うのは、「若いっていいな」(笑)。
みんなホント「いま」が楽しそうで、生き生きとしています。
ヤングジョッキーズシリーズは佳境にさしかかり、12月のファイナルラウンドに進出できるメンバーがだいぶ見えてきました。
若いうちしか出場できないこのシリーズも、全力で楽しんんでほしいなあと思います。
小倉2歳S兄弟制覇
先週の小倉2歳ステークスはアスクワンタイムの見事な差し切り勝ちでした。
今年の夏の小倉開催は1開催4週のみでしたが、最終週となる先週は外が伸びる馬場。
それを追い風に後方から一気に差したのがアスクワンタイムだったのですが、レース前の陣営は「まだまだ伸びしろがたっぷりあって、ちょっとゆっくりなタイプかな」と話す中での重賞制覇でした。
それだけポテンシャルの高さと、この兄弟を大切にしてきた梅田智之厩舎の思いが結実した結果だったと言えるでしょう。
「この兄弟」というのは、全兄ファンタジスト(2018年小倉2歳S)、ボンボヤージ(2022年北九州記念)などのこと。
小倉芝1200mの重賞にとても強い血統で、かつ兄弟のほとんどは梅田厩舎に預託されています。
ファンタジストは19年京阪杯のレース中に急性心不全で倒れ、その衝撃と悲しみを覚えている方もいらっしゃることでしょう。
梅田厩舎の方々、特に担当厩務員や調教に乗っていた方々は深い悲しみに包まれていたのですが、
そんな時、入厩してきたのがファンタジストにそっくりな性格を持ったアスクワンタイムだったのでした。
奇しくも、ファンタジストが初勝利を挙げたのと同じ日と同じコースで初勝利を挙げ、重賞初制覇のレースまで同じになりました。
大切な家族や大好きだった競走馬が亡くなった時、「夢でもいいから会いたい」と願ったことが何度かあります。
梅田厩舎にやってきたアスクワンタイムは陣営にとってそんな思いも叶えてくれたことでしょう。
それだけでなく、兄とは違った面も見せたり、末脚が武器だったり、彼なりの良さも併せ持ち、新たな物語を紡いでいこうとしています。
成績欄だけでは分からぬ思い
8月最終日は佐賀競馬場へサマーチャンピオンJpnIIIの取材に行ってきました。
重賞未勝利なのが不思議なくらい、ダートグレード競走で常に上位争いを繰り広げるヘリオス
夏にグンと調子を上げるレディバグ
ハンデからも好勝負が期待できるオマツリオトコなど
好メンバーが揃った中、勝ったのはこれがオープン初勝利でもあったサンライズホークでした。
この馬、成績を見ただけでも「すごい・・・」と感嘆の言葉が漏れる馬で、初勝利はなんと3歳未勝利最終週。
まさに今週と同じ状況で、背水の陣といった状況でした。
加えて、デビュー2戦目で初ダート。
単勝は158.4倍という評価でしたが、ダート1000m戦で鋭く差すと初勝利を挙げ、さらに3連勝で一気にオープンへと上り詰めたのでした。
タラレバを言うならば、もしもあの時、最後の未勝利戦を勝てていなければ、いまごろはJRAに在籍していなかったかもしれません。
競走馬の運命はふとした瞬間に大きく変わるのだな、と改めて感じる1頭です。
そして、陣営の大胆な判断もまたサマーチャンピオン制覇を手繰り寄せたように感じます。
というのもオープン入り後は、それまでの4連勝で見せた鋭い末脚を生かせない競馬が続いていたのが、サマーチャンピオンでは思い切った逃げの手に出たのです。
これには本当に驚いて、「えぇっっ!!」と声を上げてしまいました。
また、盛岡のクラスターカップから長距離輸送を挟んでの中1週での佐賀だったのですが牧浦調教師は臨戦課程をこう話します。
「クラスターCは硬さなどは抜けて体調面は良くなっていたのですが、休み明けで仕上がり面でもう一歩。
そこを叩いていいステップになった感じで、馬がもう一段階上がったので間隔は詰まっていましたが出走を決めました」
状態の良さ、そして長らく1200mを使ってきていたのを200m距離延長し、初ブリンカーで集中力を増して序盤からの積極策に出られたのでした。
何も知らずに成績欄だけ見ると、「未勝利最終週にギリギリ勝ち上がった」「強行ローテで初距離に挑戦」
と、ともすればネガティブに捉えてしまう可能性がありますが、
そこにはサンライズホークを何とか勝たせたい、という陣営の思いが詰まっていたのだな、と改めて感じたサマーチャンピオンでした。