イクイノックス、パドックでの納得
先週の宝塚記念。
イクイノックスの強さを改めて感じるレースでしたね。
「このコースでプレッシャーがありました」とレース後にルメール騎手が話したように
内回りコースで馬場状態も含め決してイクイノックス向きだったとは言えない中
世界ランク1位の馬で臨む一戦は大きなプレッシャーもあったことでしょう。
陣営は初の関西輸送と美浦の坂路が閉鎖されていることを踏まえ
今回、栗東滞在を選びました。
報道では栗東滞在5日目となった朝、
「関西のノリツッコミにどきまぎしている感じ」とジョークを交えた木村哲也調教師のコメントが紹介されていました。
あれほどまでの強さを誇る馬ですが、このコメントからは新しい環境には慎重なタイプだということが伝わってきます。
それは宝塚記念のパドックでも見て取れました。
装鞍所から地下道を通ってパドックに入場してくると、他馬より一つ頭を高くして、周りの様子を観察している雰囲気。
目線も観客席の方に向いたりキョロキョロしつつ、尻尾は少し浮いた状態でした。
「イクイノックス、この環境にまだ馴染めていないですね」
顔なじみの記者さんとそんな話をしながら様子を観察していると、5~10分ほどした頃でしょうか。
あれほど「ここはどういう場所なんだ?」と探っていたのが
ふっと首が下がり、「阪神競馬場のパドック」という場所に納得したかのように落ち着いて歩くようになりました。
ナーバスで慎重だけど、テンションが上がり過ぎることはないし、一定の時間があれば本人も納得する。
そして、レースで自身の力をしっかり発揮できる。
レース内容だけでなく、そんな点にもこの馬の強さを感じました。
九州産馬のセリ
昨日、鹿児島県で九州1歳市場が行われました。
冒頭では九州産馬として初めてJ・GIを勝ったイロゴトシ(2023年中山グランドジャンプ勝ち)の関係者への表彰があり
牧田和弥調教師と黒岩悠騎手が出席しました。
黒岩騎手はこのためだけに日帰りでの鹿児島入りだったようですが、こうして様々な方面から祝福や表彰をしていただけることは嬉しでしょうね。
セリ自体も活況で、売却総額5700万円(税別)はレコードを記録。
毎年、このセリに足を運ぶ谷潔調教師も
「活気があって今年は人も多くて、馬質も年々上がっているように感じました」
と話していました。
その谷調教師。
九州産限定レースにはほぼ毎回管理馬を送り出しているので、POG取材真っただ中の3月に
「九州産馬のファンも増えているので原稿で紹介したくて、注目馬を教えていただけませんか?」
とお伝えしていました。
すると先日、「九州産馬が2頭、トレセンに入厩するよ!」との連絡が。
「アイタカが九州産馬の中では良さそうです」とのこと。
夏競馬になり、小倉開催が始まると開幕週には九州産馬限定の新馬戦、3週目には2歳限定のひまわり賞、また佐賀競馬場では8月16日に霧島賞が行われますから
ある意味では「九州産馬の季節」到来とも言えるかもしれません。
また、佐賀競馬場では昨年、地方競馬史上初めて「九州産馬限定2歳新馬戦」を実施。
今年は先週17日に行われカシノルーカス(父ケイムホーム)が勝ちました。
また、今年の佐賀皐月賞を勝ったネオシエルは宮崎県産の馬。
来年にはJBC当日に九州産馬限定の地方競馬全国交流重賞が実施されることも発表されるなど
九州が馬産地として再び活気づいてきたように思います。
競馬と温泉
先日、盛岡競馬場で取材の翌日、帰りの飛行機を夕方の遅い便にして
八幡平市の温泉まで足を伸ばしてきました。
何回も行っていながら、数年前まで知らなかったのですが、岩手県は温泉の宝庫。
たとえば花巻空港から車で15分も行けば花巻温泉というちょっとしたリゾート化されたエリアが。
また、同じ花巻市内にも車で1時間かからない川沿いに鉛温泉という、作家にも愛された温泉があります。
中でも藤三旅館は日本一深いと言われる深さ125cmの岩風呂があり、
もちろん立って入るのですが、「本当に足が着くかな?」と不安になるくらい深くて
入ってしまえば浮力でふわっとする感じが何とも不思議です。
で、この温泉に魅了されて、再び藤三旅館へ日帰り入浴しにいこうかと思っていたところ
地元記者さんから「松川温泉もいいよ」と聞いて、今回はそちらへ。
活火山である岩手山の裾野に広がるエリアゆえ、とても成分が濃い温泉が湧いていて
松川温泉は乳白色で硫黄の匂いがしっかりして「ザ・温泉」という感じ。
ちょうど5月下旬の新緑の季節だったため、露天風呂では乳白色の温泉と新緑のコントラストが何とも言えず
地元のお姉さまとお喋りしながら、つい長湯してしまいました。
昔ながらの温泉によくある「シャワーはありません」というタイプで
源泉の上がり湯をかけて上がったのですが、ここからが大変。
あまりに成分が濃いため、お洋服に硫黄の匂いが染みついてしまったのです。
重曹を溶かしたお湯につけ置き洗いすればいい、いやクエン酸の方がいい
・・・など、ネット上の情報を色々試し、ひと晩夜風に当てたりもしたのですが
お気に入りのワンピースはいまも松川温泉を彷彿とさせる硫黄の香りを発しています。
この話をある調教師にしたところ
「僕もその経験あるよ。
福島競馬場に行ったついでに温泉に入ったんやけど、硫黄の匂いが取れなくてね。
諦めた方がいい」と。
何ともショックですが、そうそう、福島にもいい温泉がたくさんありますよね。
さらに言うと、競馬場のある土地にはそれぞれ風情ある温泉がある地が多く、競馬と温泉をセットにすることも多々。
夏競馬がそろそろ始まり、個人的にはヤングジョッキーズシリーズで全国各地を飛び回る季節。
タオルをスーツケースに忍ばせて、競馬と温泉ライフを楽しみたいと思います。
日本ダービー
先週の日本ダービー。
勝ったタスティエーラは差し馬が台頭した皐月賞で唯一、先行して2着だったとあって
改めて力を発揮した一戦でした。
4着ベラジオオペラまでクビ、ハナ、ハナという大接戦で、見ていてとても白熱しました。
ちょうど京都競馬場では白百合ステークスのパドック周回中だったのですが
ダービーのゴール直後、ベラジオオペラの上村厩舎のスタッフさんが控室から出てきて
パドックを曳いている同僚にジェスチャーで着順を伝えているシーンもまたダービーが特別なレースだということを感じました。
直接の担当馬でなくとも、同じ厩舎の馬が生涯一度の舞台に挑むというのは大きな出来事であったと思います。
きっとこの日この時間帯、競馬場や厩舎などいろんな場所でダービーの結果を気にしながら仕事をいていた関係者も多かったことでしょう。
一方で、ゴール直後に倒れたスキルヴィングに胸を痛めた人も多かったと思います。
私もその一人。
牡馬に生まれたその日から「未来のダービー馬だ」と期待をかけられ育ててこられたであろう3歳馬が、その大舞台で命を落としてしまうというのはあまりに衝撃的でした。
スキルヴィングの勇姿を胸に刻みつつ、
勝ったタスティエーラに最大限の称賛を送りたいと思います。