はい!現場の大恵です


サイレンススズカのその先へ

天皇賞・秋。
逃げて逃げて持ち味が活きるパンサラッサがここでも個性を活かし
スイスイと気分よく逃げました。

常識にとらわれない逃げでもあり、1000m通過は57.4秒というハイペース。
それを見た瞬間、シルポートの大逃げを思い出したのですが、3コーナーで全体の隊列が映し出された瞬間

「違う、これは体当たりの逃げなんかじゃない。
サイレンススズカだ・・・」

と思いました。

いまから24年前、逃げて圧倒的な強さを見せたサイレンススズカは
春に宝塚記念を南井克巳騎手と制し、次は主戦・武豊騎手とのコンビでGI制覇を!と待ち望まれていました。

オープン特別のバレンタインSや重賞・金鯱賞での逃げ切り勝ちは
土曜日のレースながらかなりの話題になるほどで
彼の軽快な逃げっぷり、かつ直線でも差し馬のごとく脚を伸ばせるレースぶりに虜になっていきました。

しかし、1998年の天皇賞・秋の4コーナーでは
後続を10馬身以上離していたサイレンススズカが突如失速。
サラブレッドはガラスの脚とも言われますが、まさに前脚を骨折しての競走中止だったのです。
彼の無事を願うファンの思いは届かず、予後不良となったのでした。

あの時、サイレンススズカがゴールまで走り切れていれば
どんなレースになったのだろう、と叶わぬ夢を見た人も多かったはず。
私もそんな一人で、あれからずっと胸にモヤモヤを抱えていたのですが、それを一つ晴らしてくれたのが「ウマフリ」に寄稿されたエッセイでした。

だから、パンサラッサが大きなリードを保って迎えた直線は鳥肌が立ちました。
「粘れ!」と何度叫んだことか。

1000m通過タイムがサイレンススズカのそれと全く同じだったと聞いた時は
運命のようなものを感じました。

とはいえ、パンサラッサには彼なりの個性があって
定年を控えた池田厩務員は日々、パンくんのケアに注力されています。

その個性を押し潰すかのようにサイレンススズカの姿と重ね合わせることはしたくない一方、
24年前、見たくても見られなかった景色を見せてくれてありがとう
という気持ちにもなりました。

パンサラッサ、次走予定の香港でもいいレースを期待しています!


男女平等とは何なのか

今夜、NumberWebで掲載された小田部雪 元騎手のインタビューを担当しました。

いまから約30年前、大分県の地方競馬・中津競馬場でデビューした女性騎手です。
90年代、アイドル的扱いを受ける一方で、重賞は3勝。
中津が突然の廃止を迎えた後は熊本県の荒尾競馬場に移籍して騎乗しましたが
ほどなくしてひっそりと引退していました。

しかし、引退から20年の時を経て、佐賀競馬の専門紙の予想家として競馬界に復帰。

そこには「九州の地方競馬で唯一生き残った佐賀には潰れてほしくない。競馬場の廃止なんて、もう見たくない」という思いがあったようです。

そんなタイミングで、今だからこそ話せる現役時代のことを聞きました。

ある程度想像はしていましたが、一般社会でも今よりもまだ女性の進出が未熟だった時代です。
取材をしてみると、中津には女子トイレがなくて男子トイレをこっそり使うなど
環境が整っていたとは決して言えない状況だったことが分かりました。

ただ、小田部さんはそれを憂うことなく、「嫌でした~」と話しながらも「仕方ないですよね」と、どこか懐かしんでもいました。
きっとそれは「女だから、という扱いを受けた記憶はない」と話すように
周囲の方々が「女性騎手」ではなく「一人の騎手」として接してくださったからではないのかな、という印象を受けました。

ポジティブな方なので、負の気持ちを見せないようにされていただけかもしれません。
仮にそうだとしても、「女だから、という扱いを受けた記憶はない」という事実は大きなことだと思います。

「男女平等」という言葉はとても難しく、女性を優遇することとは異なります。
個人的に思うのは、あくまでも機会を平等に与えるというもので
女性を過剰に擁護したり下駄を履かせるものではない、と。
もちろんこれは女性社会における男性に対してもそうです。

そんなことを色々と考えながら、もう一度インタビューを読み返したり、記事についたコメントを読んだりしていました。

いま、JRAでは今村聖奈騎手が新潟の年間リーディングに輝き
永島まなみ騎手は千直で内ラチ沿いを走って勝ってアッと言わせ
藤田菜七子騎手や古川奈穂騎手もそれぞれに活躍をしています。

過去の教訓を生かしながら、男女ともに平等に機会が得られる社会に向けて議論が進んで行けばいいなあと思います。


菊花賞の思い出

12年前の菊花賞は葬儀場で見ていました。

前夜は当時勤めていた薬局の懇親会。
携帯が圏外の地下でみんなでワイワイ飲んで、さあ2軒目に行こうと地上に出て携帯を確認したところ
おびただしい数の不在着信が家族から入っていました。

「もしかして・・・」

と思い、慌てて電話すると、入院中の祖父が亡くなったとの報せでした。

かねてより「葬儀は身内と親しい人だけでこじんまりとやってほしい」と希望していた祖父。

親族が寝泊まりするフロアの一角、リビング的な広間に祭壇を設けてもらっての葬儀となりました。

そうしてお通夜を数時間後に控えた中、祭壇の正面に置かれたテレビで見たのがビッグウィークが勝った菊花賞。
いまやトップジョッキーとしての地位を確固たるものとした川田将雅騎手のGI初制覇の瞬間でした。

直線では西日に照らされた3歳馬たちが長い影を作りながら最後の一冠を目指し、力の限りを尽くして走っている姿が今でも目に焼き付いています。

それと同時に思い出されたのは祖父と馬にまつわる記憶。

ギャンブル嫌いな祖父に遠慮して、毎週末に会いに行った時には
どれだけ競馬中継を見たくても我慢していたのが
ふと関テレにチャンネルが変わった瞬間の目の輝きを祖父は見逃さなかったのか
ある日を境に祖父がザッピングするふりをして午後3時を回ると関テレの競馬中継をつけてくれるようになりました。

ある時は、第二次世界大戦下で招集された時に
馬に乗ったり世話をする係を任されていたことがある、という経歴も話してくれました。

「陽子ちゃんが好きなように生きたらいいんやで」
という言葉は、薬局勤めを続けるか競馬の世界に身を投じるかを悩んでいた時に背中を押してくれました。

あれから12年。
命日の今日、13回忌の塔婆をお墓に立ててきました。
時が経つのはあっという間のような、まだ12年しか経っていなかったのかという気持ちのような。

淀と仁川、舞台は違えど、今日の菊花賞はビッグウィークのことを思い出しながら見ていました。


久しぶりに仕事で競馬場へ

先週の開催からフリーカメラマンの競馬場での撮影が解禁されたようです。

「フリーアナウンサー」「フリーライター」「フリーカメラマン」
といった「フリー」とつく職業は外部の人からはどういう形態で仕事をしているか分かりづらい、とたびたび聞かれます。

競馬のフリーカメラマンは会社員として新聞社や雑誌社には所属していない人たち。
いわば「自分の腕一本」で食べていっているカメラマンさんたちで、
撮影したレースや競走馬の写真は優駿をはじめとする雑誌や
人によっては海外の競馬情報媒体、あるいはJRAカレンダーやポスターに掲載されています。

芸術的な写真や、競馬への愛に溢れた写真が多くて
個人的にはフリーカメラマンの撮った写真が大好き。

コロナ禍ではごく一部のフリーカメラマンを除き、競馬場へ入場できない状況が2年半、続いていましたから朗報です。
たくさんのカメラマンが写真を撮れば、
レースの感動シーンを様々な角度から切り取った写真が見られるようになるでしょう。

そして私も今日は久しぶりに仕事で東京競馬場へ行ってきました。
フリーライターの立場では競馬場で騎手や調教師の取材は未だできないのですが
許される範囲でこうして行けたことはなんだか一歩進んだ気がします。


JBCへ着々と

今週は平日の火曜日から白山大賞典、東京盃、レディスプレリュードと
3日連続でダートグレード競走が行われました。

白山大賞典は当初、ケイアイパープルが気になっていたのですが
この馬は砂を被らずにレースを運びたい馬。
それなのに、発表された枠は4番枠で
外には逃げそうなハクサンアマゾネスやメイショウカズサがいたため
別の馬の単勝1点で勝負してしまいました。

結果的に、1周目スタンド前でしっかり外に導かれて勝利。
その瞬間、「わ、藤岡康太騎手すごい。これ、勝つんじゃない!?」
という、ワクワク感とちょっぴり後悔と(苦笑)。

そして東京盃はレッドルゼルが勝ちました。
昨年は夏負けが尾を引いて3着でしたが
今年はしっかり勝って、JBCスプリント連覇へと向かいます。

3日目のレディスプレリュードは
ショウナンナデシコに逆転するならここじゃないかな?と期待していたプリティーチャンスが勝利。

今春のアンタレスS4着が示すように
牝馬限定のダートグレード競走では実績がかなり上位の馬で
まだ重賞タイトルが手にできていないのがファンとしてもどかしいほどでした。

特に前走のブリーダーズゴールドカップではべちゃべちゃの不良馬場で前有利な中
後方から追い込んでクビ差2着と強い内容でもありました。

今回は馬具を変え、そして少しプッシュしていつもより前めに位置を取っての勝利で
騎手や厩舎関係者の強い思いも伝わってきました。

いずれもRoad to JBCの一戦となっており
クラシック、スプリント、レディスクラシックの行われる盛岡競馬場では
指定席事前抽選の申し込みと、事前入場券販売がスタートしました。
※当日の入場券発売はありません

いよいよJBCが近づいてきましたね。