地方最多の31連勝を挙げたばんえい競馬のホクショウマサルが
6月2日、急死しました。
主戦の阿部武臣騎手は、ばんえいジョッキーとしての生活について
かつてこう話していました。
「僕たちにとって馬は家族のように大切な存在。
だから、休みの日でも馬のことが気になるし
休日には牧場などに馬を見に行きます」
活字にすると、何てことないように感じるかもしれませんが
実際にはもっと細かく話されていて
その口ぶりから、阿部騎手の中で最優先事項は
自身の体を休めたりリフレッシュすることでも、家族と出かけることでもなく
厩舎の馬たちはちゃんとご飯を食べているか?
若馬の成長は順調か?
といったことなんだろうなと個人的には想像しました。
ホクショウマサルは喘鳴症で2年4か月の休養を余儀なくされながらも
2018年7月に復帰すると、そこから破竹の連勝劇。
連勝記録が近づき、さらに更新する頃にはテレビなど多くの取材があったようで
陣営にとっては大きなプレッシャーの中で達成した記録でもありました。
ばんえい最高峰レースと言われる「ばんえい記念」に昨年挑戦後は
なかなか勝てない時期が続きましたが
昨年末から勝利を手にすると、今年3月のばんえい記念を見事に制覇したのでした。
その優勝会見で阿部騎手は
「調教も大事ですが、やっぱり体調管理が大切です。
体調が上下せず、平均的に整えられるように気を付けています。
毎日、ホクショウマサルには僕しか触らないので
運動に行く時の様子や、運動をしている時、つなぎ場、馬小屋にいる時に
顔色やエサの食べ方を見て小さなことに気づいてあげられるようにしています」
と話していました。
ばんえい記念優勝にあたって
「馬と二人三脚でつかんだ勝利」とか「365日寄り添ったホクショウマサルと」とか
こういった表現が浮かんでいましたが、
阿部騎手のこの言葉を聞くと、そんな表現すら陳腐に思えるくらい
ホクショウマサルのことを思っていたんだと感じました。
ホクショウマサルの急死を聞いた瞬間、ショックでたまらなかったのですが
私でこれだけ悲しいのだから、共に生き、苦楽を共にしてきた阿部騎手や坂本調教師の悲しみはどれだけ深いだろう、と想像を絶します。
そして、ばんえい競馬のファンのみなさんは
最近なにかと騒がしい中、つらい思いをしたり現場の思いが伝わらないもどかしさや怒りも感じられていたことと思います。
そんな中でのホクショウマサルの突然の死。
ホクショウマサルのご冥福をお祈りするとともに、
ばんえい関係者やファンのみなさんがこれ以上つらい思いをすることがありませんように、と願います。