はい!現場の大恵です

ディープと小さな牧場の話

今春、とある取材で池江泰寿調教師に
ディープインパクトやその産駒についてお話を伺うことがありました。

父・泰郎 元調教師が管理し
2006年の凱旋門賞遠征には自厩舎のピカレスクコートを帯同させた池江泰寿師は

「ディープインパクトはサラブレッドがさらに1つ進化した種類の馬だったと思います」

と評しました。

「骨格が大きくないとGIは獲れない」という通説を覆し
小柄でありながらネコ科のような関節の可動域が広い走りを見せ
顎が細くシュッとした顔立ちは競馬ファンのみならず世間一般の人々を惹きつけました。

 

そんなディープインパクトの血は多くの人々が欲しました。
今年のセレクトセールでは1歳と当歳合わせて14頭が1億超え。
また、昨年の種付け料は4000万円だったと言われています。

これまで産駒が手にしたGIタイトルは51個ですから
期待を込められてこれだけの値がつくのは当然だったのかもしれません。

「超高額馬で、活躍する」

そんなイメージのディープ産駒を
念願叶って手にした人たちもいました。

 

数年前、個人オーナー所有で、浦河で繁殖生活を送る牝馬が
ディープインパクトの仔を受胎することに成功しました。

家族4人と従業員1人、番犬の役割も担うアイドルポニー1頭の
決して大規模とは言えない浦河の牧場に
初めてディープ産駒が生まれました。

スッと通った鼻筋、小さな顔、賢そうな目
――生まれたばかりの牡馬を見て牧場主は
「やっぱりディープの仔は品があるわ~」
と顔をほころばせました。

放牧地にディープ産駒を放つたび
しなやかに走る姿を見ては胸を高鳴らせました。

そしてオーナーはこの牡馬を将来、種牡馬にすることを夢見て
サンデーサイレンスの血が入っていない牝馬を買い集めました。
もちろん、このディープ産駒のお嫁さん候補として。

 
こうしてディープインパクトの元にはたくさんの夢と希望が集まったことでしょう。
私も夢を寄せた一人でした。

 
どうぞ安らかにお眠りください。