かなり以前のことになるのですが、とある厩舎を訪れた時のこと。
厩舎の端にある調教師室の入口扉を開け閉めしながら
「なんかちょっと変な音しーひんか?」
と調教師が言いました。
「閉まる時にわずかに違和感のある音がして
気になって仕方ないんよなぁ」と。
私には全く分からなくて
何度も何度も開け閉めをして一緒に確認したのですがやっぱり分からなくて
「すみません、私には普通の扉音にしか聞こえません…」
とギブアップしてしまいました。
元々、かなりのめんどくさがり屋で大雑把な性格の私。
それゆえ、心の中では「壊れたわけじゃないから、別にいいのでは!?」とまで思ってしまっていたんですよね。
今週のトレセンでふとそんなことを思い出して
別の調教師に話していると
「あぁ~。それ、分かるわー!」
と納得されてしまいました。
どういうことかと言うと
「私たち調教師は馬のわずかな変化にいち早く気づくのが仕事。
だから朝一番、馬房から出る一歩目の足音で
『あれ、いつもとちょっと違うな』とか
『蹄鉄の釘が緩んでるような音がするな』
ってなるんです。
だから、扉の音にも気づくんでしょうね」
わぁ~!!!
と感動するほど納得しました。
こういった職人技はトレセン内に多く存在していて
たとえば厩務員や持ち乗り助手だと
ひ腹を触って「●●のレースの時より皮1枚分厚い」
と担当馬の状態を把握して、調教内容やエサに反映させる人も。
些細なことの積み重ねが
レースでの結果を大きく左右するだけでなく
さらに言えば、無事にレースに向かえるかにも関わってくること。
扉の異音から職人技の奥深さを知った今週のトレセンでした。