レース中の落馬により高次脳機能障害と左半身麻痺が残る元騎手の常石勝義さん。
現在はトレセンや競馬場で取材を行ったり
馬術でパラリンピックを目指していることは多くの方の知るところでしょう。
昨日の朝も栗東トレセンでお会いしました。
「すみません、僕、覚えるのが苦手で……
お名前を教えていただけますか?」
会う度にいつも謝りながら名前を聞いてくださいます。
このやり取り、10回以上はしたでしょうか。
常石さんの記憶障害のことは知っているので
私はまったく気にしないのですが
「覚えていなくてすみません」といつも丁寧に謝ってくださると胸が痛んでしまいます。
(ビッグテーストの主戦騎手だったのですから
競馬ファンとしてはむしろ憧れの眼差しで見てしまいます)
パラリンピックに向けて励んでいる馬場馬術でも経路を覚えられず苦労していらっしゃるのだとか。
「こないだ三木ホースランドパークで障がい者の全国大会があって
初日はよくできて、先生が『よかったよ、かっちゃん』って褒めてくれました。
でも2日目は経路を忘れてしまって大失敗…。悔しいです。
それがなければパラリンピックに向けていい点数を取れていたんですが」
最近は2020年東京パラリンピック出場を目指し、
ドイツなど海外にも頻繁に渡っています。
「海外は馬が違いますね。
ドイツには世界チャンピオンの方が場長を務める牧場もあるんですよ」
国内で代表選手に選ばれるため、視野を海外に広げています。
「覚えるのが苦手」という常石さんですが
耳の聞こえない方々と同じ作業所に週1回通っているため
手話サークルにも参加して手話を一生懸命覚えているんだとか。
「こんにちは、とか、おはようございますくらいしかできないんですけどね」
自分ではどうすることもできない障害と戦う姿は本当に尊敬します。
ところでこの日かぶっていたキャップにも関係するのですが
常石さんはサンクスホースデイズのお手伝いで各地にもよく行ってらっしゃいます。
「僕は覚えていないのですが、落馬後、馬に乗った時の目つきが全然違って
乗馬をするようになってから一気に回復したらしいですね。
母が言っていました」
いま競走馬を引退した馬たちをリトレーニングして
乗馬やホースセラピーに生かす活動が活発になってきています。
馬の持つ癒しの力は素晴らしいですね。