『男はつらいよ』by きよしあつみ
(私 生まれも育ちも 葛飾柴又です
帝釈天で うぶ湯を使い 性は車 名は寅次郎)
(人呼んで フーテンの寅と 発します)
俺がいたんじゃ お嫁にゃ行けぬ
わかっちゃいるんだ 妹よ
いつかおまえの よろこぶような
偉い兄貴に なりたくて
奮斗努力の 甲斐も無く
今日も涙の
今日も涙の 日が落ちる
日が落ちる
ドブに落ちても 根のある奴は
いつかは 蓮の花と咲く
意地は張っても 心の中じゃ
泣いているんだ 兄さんは
目方で男が 売れるなら
こんな苦労も
こんな苦労も かけまいに
かけまいに
男とゆうもの つらいもの
顔で笑って
顔で笑って 腹で泣く
腹で泣く
(とかく 西に行きましても 東に行きましても
土地 土地の お兄貴さん お姐さんに
ごやっかい かけがちになる 若造です)
(以後 見苦しき面体 お見知りおかれまして
今日こう万端 ひきたって
よろしく おたの申します)
毎週、土曜日にケーブルテレビで流れている『週末はやっぱり寅さん』平成が令和に変わったが、昭和の香りを変わる事なく漂わせている。
その『男はつらいよ』シリーズの中で、最高傑作と云われているのが、『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』。
マドンナは、流れの歌手リリーに扮する浅丘ルリ子さんで、リリー3部作のラストを飾った。
ハイビスカスの花が咲き乱れる沖縄を舞台に、寅次郎とリリーがついに結婚か!そんな思いさえ抱かせるいいシネマであった。
「今年の『ダービー』は簡単だろう。モンテプリンスでなんもねえ。『皐月賞』はラッパの勝太郎厩舎、末夫のハワイアンイメージにやられての4着だったが、『NHKマイル』の強いの強くねえのって7馬身差の圧勝だ。正人が鼻唄混じり持ったままの大楽勝で、調子がグングン上がって来ている。相手も内から洋行のオペックホース、義明のサーペンプリンス、早人のテイオウジャまで。27頭出てるたって、後はオリンピック精神、出る事に意義があるてなもんだ。枠の2ー5、3ー5、4ー5でお帳面のレースさぁね。逃げ宣言、デカ鼻太のサクラシンゲキが飛ばすだろうが、府中の直線は長ぇ。測ったようにモンテプリンスが差し切るからまぁ見てなって」と胸を張った。
長講釈はマスターの若い頃からの悪い癖である。
「第4コーナーから直線!先頭はサクラシンゲキ!サクラシンゲキ頑張っている!馬場の真ん中から突っ込んでくるのはオペックホース!モンテプリンス来る!モンテプリンス来る!先頭は!モンテプリンス出た!モンテプリンス出た!サクラシンゲキ鞭が入る!オペックホースも来るが!モンテプリンスが引き離す!半馬身リード!オペックホース首まで迫る!モンテプリンスか!オペックホースか!オペックホース差した!差した!オペックホースだ!郷原洋行ダービー初制覇!やった!やった!郷原洋行やった!」
1着 オペックホース 郷原洋行
2着 モンテプリンス 吉永正人
3着 テイオージャ 蓑田早人
枠連2ー5 610円
「いや〜驚いた驚いたのビックリマンだ。まさか洋行が正人を差し切るとは。松山のテキも夢にも思ってなかったんじゃねえか。しかし洋行の野郎鬼みてぇな顔して追ってたな。なんでも馬主がついこの前鬼籍に入ったらしいが、ありゃ〜まだ成仏してなくて、洋行とオペックホースに乗り移ったに違ぇねえ。だってョ〜モンテとオペックが100回走ったら、チイとばかし目端の効く馬券愛好家なら、99回はモンテが勝つのは常識だっちゅ〜の」
オペックホースの激走におったまげ〜のマスター。
その後、このダービーを制したオペックホースはニャンと!引退まで怒涛の32連敗で、ダービー馬のくせにどんだけ弱いんだと馬鹿にされ、『史上最弱のダービー馬』と有り難くない渾名を付けられる事となる。
渥美清が『男はつらいよ ハイビスカスの花』でシネマファンを魅了し、オペックホースが最初で最後の輝きを放った1980年。
もう39年も前の話しである。
さ〜今年も『ダービー』がやって来る!