北新地競馬交友録

イソノルーブルが勝つ

『愛は勝つ』by KAN

心配ないからね君の想いが
誰かにとどく明日がきっとある
どんなに困難でくじけそうでも
信じることを決してやめないで
Carry on carry out
傷つけ傷ついて愛する切なさに
すこしつかれても Oh もう一度夢見よう
愛されるよろこびを知っているのなら

夜空に流星をみつけるたびに
願いをたくしぼくらはやってきた
どんなに困難でくじけそうでも
信じることさ必ず最後に愛は勝つ
Carry on carry out
求めてうばわれて与えてうらぎられ
愛は育つもの Oh 遠ければ遠いほど
勝ちとるよろこびはきっと大きいだろう

心配ないからね君の勇気が
誰かにとどく明日はきっとある
どんなに困難でくじけそうでも
信じることさ必ず最後に愛は勝つ
信じることさ必ず最後に愛は勝つ

何と云う能天気な歌だと思うが、仰け反るぐらいの大ヒットとなり、愛に絶縁状を叩きつけられてる人間まで、愛は勝つ、愛は勝つとカラオケでがなり立てていた。

「今年のオークスだがその前に、問題は桜花賞ョ。幹夫のイソノルーブルが靴を履き忘れて、一番人気でぶっ飛んだ。いくら嫌がってるからって、靴なしで走らせたらダチカンだろう。しかも理由が、レースがテレビ中継に収まるようにスタートを強行したんじゃねえかともっぱらの噂だぜ。したらオークスはイソノルーブルちゃんメンゴで、いい枠を当てがいそうなもんだが、よりによって20頭立ての20番。J RAもこんなところで公正競馬をアピールしなくてもいいっちゅ〜の」と、桜花賞を勝ったシスタートウショウとの馬券を持っていただけに、文句タラタラのマスター。

「だけんじょ、桜花賞で単勝2.8倍だった馬が単勝12倍とは驚き桃の木さんしょの木。スムーズにハナを取れれば、いかに先行馬が不利な府中と云えども逃げ粘る可能性はある。強敵はもちろん晃一のシスタートウショウ、洋のツインヴォイス。豊のスカーレットブーケはどうかって?お父さん判ってねえな〜。チイとばかし象〜さん、象〜さんで長ぇョ。馬見の天才、はたまた名伯楽伊藤のテキが芝の1000でデビューさせたのが何よりの証拠じゃねえか」とまるで気がない。

「発表!イソノルーブルの複勝にひとずくで勝負だ。さすがに頭まではねえだろう。輸送を入れてプラス6。万全の仕上げで臨む晃一のシスタートウショウにズバッと!差される可能性が大。平場のレースなら平気でポカる晃一も、こと賞金の高いレースになると人が変わったように勝ち負けに絡んでくる。何かマニーの要る事でもあんだろうョ。え?こんなに付くならイソノルーブルの単勝を買うってか?いいんじゃねえの、どうせ千円ばっかで震えてレース見てんだからョ」
マスター、イソノルーブルの単勝を買うと云う、横にいた馬券愛好家のお父さんを鼻でせせら笑っていたのだが………..。

「4コーナーを回って直線!先頭はイソノルーブル!頑張っている!ツインヴォイスがやって来る!外からスカーレットブーケ!スカーレットブーケ先頭か!インコース!インコースからイソノルーブルが差し返す!シスタートウショウ来た!シスタートウショウ来た!4番手から突っ込んで来る!内からノーザンドライバー!先頭イソノルーブル!外からシスタートウショウ!イソノルーブルか!シスタートウショウか!イソノかシスターか!」
1着 イソノルーブル 松永幹夫J
2着 シスタートウショウ 角田晃一J
3着 ツインヴォイス 河内洋J
単勝 1210円 複勝 350円

最後の直線ラスト200mぐらいから、「幹夫!幹夫!幹夫!幹夫!」と叫びっぱなしの横の馬券愛好家のお父さんに、心の中で、どうせ差されるのに愚かな奴よと舌を出していたマスター。
イソノルーブルの驚異の粘りに「チェ!」てな塩梅だ。
「まあ、いいんじゃねえの。1か月5万も小遣いのねえお父さんのために、幹夫とイソノルーブルが情けをかけてくれたって事で。え?お父さん泣いてのんか?泣かんの〜、漢は泣かんのよ〜」

KANちゃんが、愛は勝つと歌い、馬券愛好家のお父さんがイソノルーブルが勝つと単勝馬券を握りしめた。
1991年、もう28年も前の事である。