元号が、『昭和』から『平成』そしてつい3日前に『令和』となった。
時代の移り変わりと共に、色々な事が変化していくが、日々我々の周りで流れている唄もその1つである。
『唄は世に連れ 世は唄に連れ』
先の不幸な大戦が終わって15年。
1960年前半、街には歌声喫茶なるものが乱立した。
労働運動と連動して、連帯を価値とするうたごえ運動が隆盛を極めたのである。
その対局にあったのが歌謡曲。
故寺山修司は歌謡曲の定義を、うたごえ運動との対比で、「孤絶したアウトローが一人で歌うもの」と定義付けた。
その要素として「さびしさ」「暗さ」を審美化したが、これが後の『演歌』のベースを構成するファクターとなる。
村田英雄『人生劇場』、北島三『山』、中村美律子『河内おとこ節』、美空ひばり『悲しい酒』、都はるみ『大阪しぐれ』、大川栄策『さざんかの宿』、吉幾三『雪國』、細川たかし『北酒場』、藤圭子『圭子の夢は夜開く』、石川さゆり『津軽海峡・冬景色』、ぴんからトリオ『女の道』、小林幸子『おもいで酒』、渥美二郎『夢追い酒』etc
年代はランダムながら、演歌と云われればざっとこれぐらいは頭に浮かぶ。
そんなこんなで、昭和の時代、我が世の春を謳歌した演歌だが、平成に入り凋落の一歩を辿り、地上波で見る事ができるのはNHKかテレビ東京の歌番組ぐらいになってしまった。
そんな平成の時代に、1人の若き演歌歌手がデビューした。
『箱根八里の半次郎』by きよし ひかわ
廻し合羽も 三年がらす
意地の縞目も ほつれがち
夕陽背にして 薄を噛めば
湯の香りしみじみ 里ごころ
やだねったら やだね
やだねったら やだね
箱根八里の半次郎
寄木細工よ 色恋沙汰は
つぼを外せば くいちがう
宿場むすめと 一本刀
情けからめば 錆がつく
やだねったら やだね
やだねったら やだね
まして半端な 三度笠
杉の木立を 三尺よけて
生まれ在所を しのび笠
おっ母すまねぇ
顔さえ出せぬ 積もる不幸は 倍返し
やだねったら やだね
やだねったら やだね
箱根八里の半次郎
大ヒットを飛ばしたこの唄の中でのフレーズ、「やだねったら、やだね」は流行語となり、そこいらのミーちゃん、ハーちゃんが連発していたのである。
「とんでもねえ馬が出て来たもんだぜ!『毎日杯』で浩輝のルゼル、伸二のコイントス、洋のダイタクバートラムを子供扱い。2着のコイントスに付けた着差が5馬身とは驚いた。しかも屋根が洋文から豊様への乗り替わりだってんだから、クロフネがこの『NHKマイル』を勝つのは、チョンマゲを結って、フンドシ一丁で走り回ってた頃から決まってら〜。相手も盛岡から転厩して常に堅実駆け、勲から善臣大先生へ乗り替わったネーティブハートがド本線。狂っても亮のキタサンチャンネルまでだろう。そこでだ!JRAが『今まで随分損をさせて申し訳ございません。これで儲けてください』2年前から導入されたワイドでいてこまそう!クロフネとネーティブハートのワイドなら99.9%当たる」
聞かれてもないのに長講釈はマスターの悪い癖、自信満々サロン満で、クロフネとネーティブハートのワイドにひとズグ張り付けたのだが…………..。
「第4コーナーから直線コース!グラスエイコウオー先頭!リードが1馬身半!残り400を切った!サマーキャンドルが2番手!後は横にズラッと広がった!クロフネが来た!クロフネが来た!今3番手!外からネイティブハート!やはりこの2頭の一騎打ちか!先頭はしかしグラスエイコウオーが踏ん張っている!200を通過!リードが3馬身ある!クロフネが突っ込んで来る!3番手から2番に上がる!前を捉え切れるか!グラスエイコウオー!クロフネ!グラスエイコウオー!クロフネがやはり捉えた!クロフネ!ゴールイン!これは強い!」
1着 クロフネ 1番人気 武豊J
2着 グラスエイコウオー 13番人気 村田一誠J
3着 サマーキャンドル 12番人気 田中勝春J
4着 ネイティブハート 2番人気 柴田善臣J
5着 メジロキルディア 10番人気 吉田豊J
クロフネの追い込みは身震いするぐらいの強烈さだったが、肝心のネイティブハートがまさかの4着。
13番人気と12番人気、前目で強気の競馬に徹した、村田Jとカッチーの後塵を拝するとは。
「なんなら!善臣の馬鹿野郎!あげな大外回すなんざ〜何考えてんだ。こんな事なら岩手の勲に乗らした方がナンボかマシだ。馬主も激怒してんじゃねえか。あ〜あ、大体が…………..」
ボヤキにボヤク、マスターの頭の片隅で響いているのは、「やだねったら、やだね」、大流行している氷川きよしの唄のあのフレーズだ。
西暦2001年、平成13年の事である( ´Д`)y━・~~