北新地競馬交友録

逃亡

日産自動車の前会長、ミスター•ビーン事カルロス・ゴーン容疑者が同社の資金を自らに還流させたとされる特別背任事件で、妻キャロルさんに対する証人尋問が東京地裁で開かれた。
東京地検特捜部は、資金の一部がキャロルさんの会社に送金されたとみており、資金の流れや使途を尋ねたのである。
遡る事6日、東京地検特捜部の任意聴取の要請に応じずフランスに出国。
スワ!海外逃亡かと報じられたが、フランスで政府関係者に泣きつくも、「特別扱いは出来ない」と剣突を喰らわされるお粗末君。
世界のどこにも身を隠すとこはなし。
ならばと日本に舞い戻って、勝負!勝負!はなかなか見上げたものである。

女性の逃亡で思い出すのは、『松山ホステス殺害事件』の福田和子。
同僚のホステスを殺害、夫とマンションから家財道具を運び去ってトンズラを決め込んだ。
家財一式を奪った上に、遺体を松山市内の山中に遺棄。
ニャンとも凶悪な犯罪。
福田和子は逮捕を逃れるため整形手術を受け、当時の強盗殺人罪の公訴時効である15年をクリアーすべく、日本全国をまたにかけての逃亡生活を送っていたのである。

時効が近づき捜査当局は顔面蒼白。
最後の手段と、松山東警察署は逮捕につながる情報を提供した者に対して100万円の報奨金を支払うと発表。
整形した病院も400万円の報奨金を出すとして、マスコミの報道がオーバーヒートした。
そうした中で、福井市の飲食店からなじみの客が手配者に類似しているとの通報があり、密かに採取した指紋が一致し逮捕。
時効成立まで僅か21日前の逮捕劇であった。
日本犯罪史上、他の追随を許さない逃亡劇だったのである。

「牡馬クラシック第一弾『皐月賞』は、『共同通信杯4歳S』をぶっこ抜いて、『スプリングS』でも2着を確保した幹夫のメジロブライト、『弥生賞』を3馬身差で大楽勝した豊のランニングゲイル、東上最終便『毎日杯』でいい走りをした幸雄のヒダカブライアンの三つ巴だ。中でも安定感ならメジロブライト。ズンない脚を使って間違いなく最後は伸びて来る。俺ぁ〜直線の短けぇ中山でも充分アタマがあると踏んでるんだ。枠の4ー5、4ー7が大本線。紛れがあるとしたらメジロブライトが不利を受けた時だろう。5ー7を元返しで押さえりゃ〜お帳面のレースだがね。」

「『スプリングS』を勝ったビッグサンデーが怖いんじゃないかってか?お父さん判ってねえな〜、小倉の弱っちい相手なら2000でも持つが、新馬が1200、その後も1400、1600を陣営が使っていたのには訳がある。1800までがギリギリで、強敵揃いのG1じゃ〜カモもカモ。ネギだけじゃねえ、シイタケとハクサイまで背負ってのお出ましさあね。8番人気で『スプリングS』を勝ったのは、幹夫のスパートがチイとばかし遅れただけの展開の綾だ。本番では幹夫がビッチリいい仕事してますね〜だっちゅ〜の。さ〜張った!張った!」
聞かれてもいないのに長講釈はマスターの昔からの悪い癖である。

「第4コーナーを回って直線!サニーブライアン先頭!サニーブライアン先頭!まだ3馬身のリードがある!フジヤマビザンが差を詰める!更にゴッドスピード!エアガッツも来る!大外からメジロブライト!大外からメジロブライト!間を割ってセイリュウオー!シルクライトニング突っ込んだ!先頭はなんと!サニーブライアン!サニーブライアン逃げ切った〜!そして2着にシルクライトニング!第57回皐月賞は大波乱!」
1着 サニーブライアン 大西直宏 11番人気
2着 シルクライトニング 安田富男 10番人気
3着 フジヤマビザン 松永善之 12番人気
単勝 5180円 枠連1ー8 7180円 馬連 51790円

「なんでぇこりゃ!ふざけた競馬しやがって。大西だ?サニーブライアンだ?普通大外枠から飛び出して逃げ切るなんて芸当出来ねえだろう。『若葉S』でわざと負けて三味線引いてんじゃねえョ。でもって2着、3着が『若葉S』1着のシルクライトニングと2着のフジヤマビザンだってんだからやってられねえぜ。幹夫も幹夫だ、最高後で余裕かましてるからこったら事になんだ。力はダンチにあんだから、もうちっと早めに仕掛けなきゃダチカンだろうが。豊もなんなら!跨ってるだけじゃねえか。幸雄に至ってはどこ走ってんのかも判らなかったぜ。全員大ハズレ!こったらレースしてたら、まともな馬券愛好家は全員オソボにされる。来週から馬券買う人間がいなくなるっちゅ〜の」
とどまるところないボヤ節も時すでに遅しなのである。

稀代の逃亡女子福田和子は、時効の15年に、後僅か21日を残して取っ捕まったが、サニーブライアンは花散らしの風を背に中山のターフをまんまと逃げ切った。
どちらも1997年の事である。