「よ〜し!見ちょけョ!ひしゃげちゃる」
毎月25日になるとお給金が貰える結構な身分だった若かりし頃。
25日〜月末ぐらいまでは王様で、連日同僚と飲みに出る事となる。
酔っ払ってゲームセンターの前を通ると、必ずやってしまったのがお馴染み『ワニワニパニック』。
専用のハンマーで、穴から出てくるワニを撃破するゲーム。
兎に角、アルコールでフラフラ、反射神経がいつもにも増して鈍くなっていて、ワニに翻弄されまくる。
最後は、同僚の頭をハンマーでピョコピョコ。
勢い余って取っ組み合いに発展するなんて馬鹿な事をやっていた。
その『ワニワニパニック』が大ピンチ。
製造元のアミューズメント機器製造会社KHPが2017年、特別精算により倒産したからだ。
当然、製造元の倒産で新品の供給は不可能となってしまったが、修理すれば延命できそうでも、それが厳しくなってきているという。
その理由は修理用の部品がないのである。
現在、「細かな部品も、中国など、安価に手に入る海外製品が使われるようになり、日本のメーカーとして、ゲームセンターの機械の部品は作らない方向になっている」とは、アフターサービスを担うバンダイナムコテクニカの担当者。
『ワニワニパニック』残念ながら、絶滅危惧種なのである。
「この日曜日のメインは3場とも大混戦で買いたくねえが、どれか一つと聞かれりゃ〜、中山のメイン『中山記念』だろう。ハービンジャー牝馬の最高傑作との呼び声も高いディアドラが並み居る牡馬をなで斬りだ。発表!ディアドラからの枠連、内から中山の鬼、正海のウインブライト、師匠の引退への花向け、脩のラッキーライラック、騎手としての正念場、元気のステルヴィオ、たまには孝行してくれ、圭太のエポカドーロまで。予算が7万しかねえから、ウインブライト、ステルヴィオ、エポカドーロへ平に2万。牝牝馬券でラッキーライラックへ1万で勝負を賭ける。」
「スワーヴリチャードは無視ですか?」の競馬友達K君に、「ああ、出遅れて必死のパッチで追い込んでの3着だ」とひとっぱたきのマスターだったのだが…………。
「第4コーナーから直線!マルターズアポジーをラッキーライラックが交わして先頭!3番手からエポカドーロ!ウインブライト!一番外からステルヴィオ!」
「ルメ公!何やってんだ!差せ!差せ!バッキャロ!ダミだ!」まるで伸びそうないディアドラとルメールJに罵声を浴びせるマスター。
「坂を登ってラッキーライラックが先頭!大外からウインブライト!ウインブライト!ステルヴィオも差を詰める!ウインブライト!ステルヴィオ!ラッキーライラック!広がってゴールイン!3頭の争いはウインブライト!中山記念連覇!」
見事なタテ目を喰らって、呆けたようなマスター。
紐のワンツーで2450円も付いた。
「ふざけた競馬やってやがんな〜。ディアドラなんてドコサもねえじゃん。一瞬、枠連ボックス。ディアドラからを厚めに10点張りも考えたが……..ルメ公の野郎許せねえ。切る来る、買う来ん、の法則かましてんじゃねえって〜の。阪神も小倉もメインは大荒れだ。二桁人気が頭だってんだからどうする事もナッシングだろう。頼りの中山までこんな体たらくだから、見てみろ!シーンとしちゃって。ここは北御堂の斎場かっちゅ〜の。JRAもチイとは考えねえと、馬券愛好家がお手上げで馬券が売れなきゃ〜馬なんて走っても意味ねえってぇの。大体が………..。」ボヤキ倒したところで、お金が返ってくる訳でもないのにマスター、嘆く、嘆く。
『ワニワニパニック』の機械の横にはこんな張り紙がある。
「強く叩きすぎるとワニが痛がります。優しくしてあげて下さい」。
「外れ過ぎると馬券愛好家が絶滅します。たまには簡単なレースをしてください」なのであるʅ(◞‿◟)ʃ