随分と便利な世の中になった。
中でもチャンネル一つで、昔懐かしのシネマが見れるケーブルテレビは素晴らしい。
忘れていた名作をほとんどタダのようなお足で鑑賞できる。
つい先日、お客さんがナッシング、膝小僧を抱えていたマスターがたまたま見たのが、『幸せの黄色いハンカチ』。
ご存知高倉健さん主演、山田洋次さん脚本監督のシネマだ。
夕張の炭鉱で働いていた健さんが、酒の上の間違いで人を殺める。
網走刑務所での刑期を終え、奥さんである倍賞千恵子さんに出した手紙が、「もしまだ独りで暮らしているなら、庭先の鯉のぼりの竿の先に黄色いハンカチをつけておいてくれ」。
露払いの武田鉄矢さん、桃井かおりさんに励まされ夕張に向かう健さん。
すったもんだがありながら、やっと辿り着いた小さな家の庭先には、竿の先から家の塀までロープが渡され、目にも鮮やかな何十枚もの黄色いハンカチがはためいていた。
それを見た健さんは、静かに家に向かうのである。
決して演技が上手いとは云えない健さんだが、背中で全てを語るオーラは半端ない。
不覚にも目から汗が出るシネマだ。
黄色は注意しなさい!ではない!黄色は幸せの色なのである。
「マスター、おはようございます。昨日は馬券買わなかったんですね」は競馬友達のK君。
「ああ、阪神10R『御影S』に目っこを入れていた。実質3頭立てで、将雅のシヴァージが1.6倍の過剰人気。ならば残り2頭、康成の5番ヤマニンアプリメ、デムーロの8番ホウショウナウとの3連単ボックスで、いっとう安い2ー8ー5で決まったら6倍の元返し。5ー8ー2なら25倍まで跳ねる。これに一目5千いてこまそうと思ったんだが、そんなに上手く行く訳がねえとケンしたら、8ー5ー2で決まって1790円も付いてやがんの。あ〜あやんなっちゃ〜た!驚いた!の牧伸二たぁ〜あの事ョ。買わねえ馬券はよく当たるぜ」
日曜日の朝からいきなりいい泣きが入っている。
「今日は中京メイン『チャンピオンC』ですか?」
「仕方ねえよな〜G1だから。そんなレースよか、中京最終モレイラのイーグルバローズを全力買いする方がよっぽどお利口さんなんだが………。『チャンピオンC』はまともならルメールのゴールドドーリーム回避で、ルヴァンスレーヴ頭カッチンのはずが、チョイとばかし仕上がりに不安がある。ならば前走『JBCクラッシック』で勝ったケイティブレイブと、驚異の粘りサンライズソアが同居した5枠からがいいんじゃねえかと。黄色ってぇのも縁起がいいぞ!」
「縁起?何ですかそれ?」
「それはショナイだ」
「意味不明ですね。福永Jのケイティブレイブは、これ以上ないって云うぐらいスムーズなレースが出来ましたし、モレイラJも芝なら無双ですが…….ダートはどうなんでしょうか?僕はオメガパヒュームが怖いと思いますが」
「お、お〜。ボーナスが出たお方は強気だね。この俺に意見するとはョ。オメガパヒュームは当然買うがな。4ー5、5ー5、5ー6を各2万、2ー5を元どりで3万、3ー5をこれまた元どりで5千、まさかまさかの祐介5ー7を5千でいてこます」と結論付けた。
どうやら、ついこの間見た『幸せの黄色いハンカチ』がサインだと思っている節があるマスターだが…….さて。