『兄弟船』by イチロウ トバ
波の谷間に命の花が
ふたつ並んで咲いている
兄弟船は親父のかたみ
型は古いがしけにはつよい
おれと兄貴のヨ夢の揺り篭さ
陸に上って酒のむときは
いつもはりあう恋仇
けれども沖の漁場に着けば
やけに気の合う兄弟鴎
力合わせてヨ綱を捲きあげる
たったひとりのおふくろさんに
楽な暮らしをさせたくて
兄弟船は真冬の海へ
雪の簾をくぐって進む
熱いこの血はヨおやじゆずりだぜ
あっと気が付けば、今年も11月の初旬が過ぎようとしている。
後、3週間もすれば忘年会の二次会でカラオケが北新地にも流れだす。
若者にはとんと縁がないだろうが、チョイとばかし気合いの入った勤め人に不動の人気を誇るのが、鳥羽一郎の『兄弟船』である。
「マスターさん、おはようございます。いい天気ですね」は熊本天草出身○原さん。
「まあな、やたら暖ったけえしな。これぞ秋晴れって空が広がってら。そりゃ〜いいが今週の競馬、ちいとばかし気になる事がある。あのイタリアの伊達男ミルコの乗鞍が土日で僅か7鞍。でもって先週来日した弟のクリスチャンの方が19鞍ってんだから、何かおかしくねえか?愚兄賢弟なら理解できっが、クリスチャンじゃ〜まだまだ兄貴にゃ〜敵わねえてえのに。まさか日曜日のエリ女で一世一代の騎乗をモズカッチャンでするため、体力温存て訳でもあるめえが」
「因みにG1連続勝利の記録が掛かるルメールJは17鞍です」
「それぐれえが妥当だろう。しかしルメールと獲得賞金だけじゃなく、勝ち鞍で50も差が付くとは夢にも思わなかった。ここいらで気合い入れなきゃダチカンゾ。実ぁ〜ヘラヘラして勝ちまくるルメールは好きくねえが、うちの店にも何回か顔を出してくれていて、真面目を絵に書いたようなミルコは応援してんのョ。イタリアとは先の不幸な大戦で同盟を結んだ仲でもあるしな」
「でしたら、今日はミルコさんの応援ですね」
「もちのロンと云いたい所だが、デムーロはデムーロでもクリスチャンの方を買う。発表!京都最終500万下メイショウギガースだ。1000万下からの降級で、500万下なら大威張り」
「2走前の1000万下で大負けしてますが」
「あんときゃ〜、康成がスタートでへぐって行き脚が付かず後方から、直線でも横の馬にぶつけられて馬の気持ちが切れちまっただけョ。休み明けでもそこそこ調教は動いているし、五寸にスタートを切れりゃ〜前めからしぶとく伸びて来るはず。坂のある阪神だと不安だが、平坦の京都ならありありだ」
「馬券はどのように?」
「現在は単勝が1番人気で3.5。複勝が2.9ー3.8の変なオッズだが直前になりゃ〜落ち着くだろう。単勝に9千、複勝に2万。でもって、クリスチャン&ミルコの兄弟馬券1ー10の馬連をおまじないで1千と行こうか。それにしても、ミルコの親父とお袋はこんな稼ぐ兄弟を持って左団扇だな。イタリアじゃ〜お城みてえな家に住んでんじゃねえの?もしこの2人が俺の息子だったら、毎週、馬券をバリバリ買うぜ」
「相変わらず馬鹿な事を考えてますね」
「ホットケーキだっちゅうの!」
鳥羽一郎が唄う歌の兄弟は、お袋さんにらくな暮らしをさせたいと、荒ぶる海に漕ぎ出す親孝行だが、デムーロ兄弟も負けず劣らずの親孝行である。
連れ持て来い!デムーロブラザーズ!