北新地競馬交友録

復活

「警察じゃけ〜何をしてもええんじゃ」。ニャンともドキっとする台詞を吐いたのは、我がジャパンの役者の中でも、抜群の演技力を誇る役所広司が看板を張った『虎狼の血』。
先日ゲオでリリースされたので見たのだが、久々に見応えのある邦画であった。
長い間、アニメか学芸会のチイチイパッパのお子ちゃま達が飛び跳ねるシネマばっかりで、とても大人が見るに堪える作品が出て来ない邦画。
まともな予算も掛けられないのだから、それも致した方ないが、昔は「とに角マネーは打ち込んでます」なんて作品があった。
その代表が角川映画の『復活の日』
草刈正雄とオリビア・ハッセーが主役で、南極ロケをするは、潜水艦は実際に潜らすは、湯水の如く予算をつぎ込んだ。

細菌兵器によって全世界がパニックとなり、人類は死滅する。
僅かに生き残ったのは、氷に閉ざされた南極大陸に残された863人のみで、1年後、南極で地震研究を続けていた草刈がアメリカ東部地震を予測。
その影響で今も地下に眠り続けるミサイル自動報復システムが作動し、このままでは南極大陸をも含め全世界をミサイルが飛び交うことになる事が判明する。
それを阻止する為、潜水艦で廃墟になったワシントンに向かうが、寸前に突発地震によりシステムが作動し、ミサイルが発射され世界は2度死ぬのである。
奇跡的に助かった草刈は一路の光のある南極に向けて徒歩で南に、と云うストーリー。
興行的には予算を掛け過ぎて採算が合わずコケるが、ラストの草刈正雄とオリビア・ハッセーが抱き合うシーンは、今でもはっきりと脳裏に焼き付いているのだ。

「5回目になる『エリザベス女王杯』だが、今回は清章の馬を買うかどうかその一点だ。僅かキャリア3戦で『桜花賞』をぶっこ抜いたハギノトップレディ。しかし距離の壁にぶち当たって『オークス』では17着の大負けョ。秋の復帰初戦オープン特別と、『京都牝馬特別』を連勝だがどちらも距離は1600だぜ。淀の力勝負2400のエリ女では、ちいとばかし分が悪い。悩みに悩むがここはズバッと切って、市三のラフォンテース、前走でダービー馬オペックホースをおそぼにした邦彦のインタースマッシュ、オークス馬、成貴のケイキロクのロータリー馬券。枠の2.4.8で絵にしようじゃねえか。21頭の多頭数の大外8枠は厄だが、ケイキロクとケイシャープ同一馬主が同居してっだろ。俺ぁ〜こりゃ中央競馬のサインじゃねえかと思ってんだ。え?ハギノトップレディを買うってか!お父さん。やめた方がいい最後は歩いちまう可能性が大!大!大の関テレ『ノックは無用』だ」と、競馬を始めて5年目のマスター、生意気盛りの長講釈である。

「第4コーナーから直線!ハギノトップレディ先頭!ラフォンテース来た!ラフォンテース来た!更にはスイートネイティブ!タマモコトブキが差を詰めにかかる!タケノハッピーも来た!ハギノトップレディ粘った!粘った!ハギノトップレディ先頭!真ん中を割ってタケノハッピー!3馬身!2馬身!まだある!まだある!ハギノトップレディ先頭だ!逃げ切った!ハギノトップレディ1着!やった!やった!2400でも文句なし!淀で完全復活です」
1着 ハギノトップレディ 伊藤清章
2着 タケノハッピー 飯田明弘
3着 タマモコトブキ 田島良保
単勝590円、枠連1680円
距離の壁で失速するであろうと3番人気ハギノトップレディが、伊藤清章の好騎乗もあり見事な逃げ切り勝ちである。

「清章の野郎!『オークス』で猫被りやがってョ〜。あんな乗り方が出来るなら、とっととやっとけてんだ。俺ぁ〜『オークス』で大損させられてんだ。あったま来るな。え?お父さん取ったって?そりゃ〜ようござんした。しかしョ〜大の大人が俺ちみてえな若造に馬券を見せつけるなんざ〜風の悪ぃ事はしねえ方がいいんじゃねえの。そんなこっちゃ〜いい勝負師にはなれねえョ」
鬼瓦権蔵みたいな顔の馬券愛好家に、まるで臆する事なく意見するマスター。
昔から態度だけはウルトラ大きい怖いもの知らずだったようで(笑)

邦画最大級の予算をぶち込んだ『復活の日』が公開され、稀代の快速馬ハギノトップレディが府中のリベンジを、淀の『エリザベス女王杯』で果たして見事復活。
どちらも1980年、もう38年も前の話しである。