「吉川打った！ライトへのフライ！これは犠牲フライになるだろう！巨人勝ち越し」
金曜日の夜、咥えタバコで苦虫を噛み潰したような顔をしていたのは、大阪北新地で吹けば飛ぶようなBARを営んでいるマスター。
関西でも天然記念物と云われている、『オリックス』ファンである。
『セパ交流戦』の巨人戦で頼みの黒木優太が捕まった。
「今年はまだディクソンに勝ち星がねえ。今日の巨人のピッチャーは菅野。よっぽど気張らねえとボロ負けすんじゃねえか」
試合前はドナドナだったが、そのディクソンが踏ん張り、7回まで1ー1のスコアーだっただけにショックは小さくない。
その夜、マスターの店で「何人でもいい、友達呼んでくれ。賑やかにやろう！全員にタクシー代渡すから」と景気のいい事を云っているのは、京都馬主協会の某会員さん。
「了解で〜す！」ならばと、元ＣAで店を手伝ってくれている○○○ちゃんが、元同僚の女の子に繋ぎを入れるも………….。
「すいません。巨人の選手達と新地で飲んでいるらしいです」
「…………….そらしゃあないな」と某馬主さんは諦め顔。
「オリックスに勝ったからって調子乗りやがって！こんな時間まで飲んでる場合か。明日も試合があるっちゅ〜の」マスター、激おこぷんぷん丸だ。
「伏見！打った！レフトの頭上を越えるか！越えた！サヨナラ！延長12回オリックス！サヨナラ勝ち」
明けて土曜日の試合、オリックスは1点を追う6回裏、小谷野の適時打で同点とし、その後2－2で迎えた延長12回に、代打・伏見の適時二塁打でサヨナラ勝利を収めた。
投げては、6番手・近藤が今季初勝利である。
「よっしゃ！な！試合があるって云うのに新地で飲んだくれてるから、こう云う事になんだ。オリックスの選手なんて、夜中も素振りしてるって〜の」
金曜日の借りを返したオリックスに、万歳三唱、サタデーナイトフィーバーとなった。
「マスターさん、おはようございます。昨日はおめでとうございました。阪神4R狙い通りでしたね。土曜日はこれで3週連続的中ですか、でも」
「○原さん、みなまで云うな。土曜日に小さく儲けて、日曜日にドカンと負けてると云いたいんだろ。それは俺が一番判ってる。柄杓で汲んだ水を砂漠に撒き散らかしてるような気分ョ。今日こそはいわさねえと、空き缶拾いに精を出さなきゃならねえ羽目になる」
熊本天草出身○原さんと、日曜日の朝からスマホでそんな話しをしているマスター。
先週の『ダービー』での負けが堪えているのは間違いない。
「東京G1シリーズの最終戦『安田記念』はどのように？」
「うむ、俺がメイチ気があるのは、将雅のペルシアンナイトだ。前走の『大阪杯』2000もこなしちゃいるが、ちいとばかし引っ掛かり気味。やっぱマイルがベストだと思う。勝ったスワーヴリチャードの後塵を拝したのは距離適性の差だろう。マイルならドンと来い！てなもんだ。しかも将雅には『ダービー』のダノンプレミアムでえれぇ目に遭わされたからョ。『安田記念』で借りを返して貰わなくちゃな」とひとくさり。
「買い目は？」
「馬連も枠連もオッズに差がほとんどねえ。ならば枠連だろう。ペルシアンナイトの3枠からスワーヴリチャードの1枠に4万。同じく3枠からプリンスのサングレーザー8枠に4万。内から圭太のアエロリット2枠に1万。ルメ公のモズアスコットの5枠に1万。豊大明神のリスグラシュー7枠に1万。押さえでタテ目の1ー8を2万。中途半端はやめて！奥村チヨ。おまじないでペルシアンナイトの単勝2千でいてこます」と結論付けた。
川田Jに『ダービー』の借りを返して貰うと、1週間の予算と土曜日の勝ちを全て打ち込むマスター。
3ー8で決まると提灯行列まである。
土曜日、オリックスは巨人に金曜日の借りを返したが、さて@(・●・)@
