50年ほど前にちびっ子達の間で随分と流行った言葉がある。
「巨人 大鵬 卵焼き」
お相撲さんと云えば大鵬関、ご飯のおかずなら卵焼き、そして野球と云えば巨人と云う訳だ。
これを称して『ちびっ子三種の神器』
その中でも巨人の人気たるや圧倒的。
その理由は強いだけじゃなく、テレビもラジオも巨人戦の中継がダントツで、大阪や名古屋、広島の都市部を除く地方では、明けても暮れても巨人なのだから当然であった。
その巨人と云えば直ぐに頭に浮かぶのが、ミスタージャイアンツ長嶋茂雄さんと、世界の一本足打法王貞治さん。
現役時代もお互いをライバルとし切磋琢磨した事は想像に難くないが、この2人が其々のチームを率い監督として激突したのが、ミレニアム2000年の『日本シリーズ』である。
『福岡ダイエーホークス』は王貞治監督。『読売ジャイアンツ』は長嶋茂雄監督。
ジャイアンツのV9、そして日本プロ野球を支えてきた2人のスーパースターが率いる両チームの闘いは、見る者のハートを熱くさせた。
第1戦 ホークス 5-3 ジャイアンツ
第2戦 ホークス 8-3 ジャイアンツ
第3戦 ジャイアンツ 9-3 ホークス
第4戦 ジャイアンツ 2-1 ホークス
第5戦 ジャイアンツ 6-0 ホークス
第6戦 ジャイアンツ 9-3 ホークス
『ミレニアムON決戦』を制したのは長島茂雄監督率いる読売ジャイアンツ。
視聴率が30%超えるなど、国民の注目が集まり大いに盛り上がりを見せたのだ。
この日本シリーズが長嶋茂雄監督と王貞治監督の死闘。
後世に語り継がれるシリーズなら、競馬の歴史の中でも語り継がれる熱き闘いがその年の2000年、2人のジョッキーによって『ダービー』で繰り広げられる事となる。
「なんとかならねえかな〜?なんとかよ〜」馬柱を見ながらウンウン唸るマスター。
「河内のおっさんにアグネスフライトで是が非でも『ダービー』を取らせてやりてぇ。だがョその前に立ち塞がるのが豊のエアシャカールだ。『皐月賞』を見ただろ、ありゃ〜強え。最高のレース展開に持ち込んだ1番人気亮のダイタクリーヴァを、測ったように差し切るんだからよ。馬券?そったらもんは、豊と洋のワイドを買っときゃ自動的に当たる。銭がありゃ〜100万でも1000万でもぶち込んじゃるが、無いもんは張れねえから10万で勘弁してやろって寸法だ。大体が豊は洋の弟弟子だろ。ゴール前微妙になったら、『先輩!どうぞ!どうぞ』てな事ぁ〜………ねえか、ねえわな〜勝負事だからョ。おまじないで河内のおっさんの単勝を1万追加すっか」
聞かれてもいないのに長講釈はマスターの悪い癖だが、ポケットの塵まで張り付けたのが2000年ミレニアム『ダービー』だった。
「さ〜直線!生涯一度の夢舞台!ジョウテンブレイブ先頭!ジョウテンブレイブ先頭!外から懸命にアタラクシア!エアシャカールも突っ込んで来た!さらに外!アグネスフライト!外からアグネス!外からアグネス!しかし馬場の真ん中から豊だ!豊だ!エアシャカールだ!アグネスフライトも飛んで来ている!エアシャカールかアグネスフライトか!河内の夢か!豊の意地か!豊のV3か!河内悲願のダービー制覇か!どっちなんだ〜!」
1着 アグネスフライト 河内洋J
2着 エアシャカール 武豊J
3着 アタラクシア 四位洋文J
単勝510円、ワイド350円
「し、痺れたぜ!豊も凄えが、河内のおっさんの執念も凄え!こんな叩き合いが見れるなんて、俺ぁ〜本当に競馬やってて良かった。そこ爺さん!冥土の土産にいいもん見せて貰ったじゃねえか。馬券が当たったからだろうって?くぬ野郎もういっぺん云ってみやがれ、てめの寿命は後5秒だ」
「………………..」
全国の競馬ファン1000万人を興奮の坩堝に叩き込んだ2000年ミレニアム『ダービー』
もう随分と昔の話である。
いざ!ダービーに( ̄(工) ̄)