怯えた表情のチャンピオンに、挑戦者の絶望的破壊力を持った左フックが炸裂。
チャンピオンのトレバー・バーウィックが立ってファイティングポーズを取ろうとするも、足元がふらついて……この瞬間、史上最年少20歳の世界ヘビー級チャンピオンが誕生した。
最強にして最凶のチャンピオンの名はマイク・タイソンである。
2歳の時に父親が母とタイソン兄弟を捨てて蒸発。
荒んだ少年時代を過ごしたマイク・タイソンは、ニャンと!12歳までに51回も逮捕され、ニューヨーク州でも最悪の少年が収容されるトライオン少年院に収監される事となる。
そこで更生プログラムの一環として行われていたボクシングと出会い、少年院のボクシング担当教官だったボビー・スチュワートから手ほどきを受ける。
ロッキー・グラジアノ、フロイド・パターソン、そしてホセ・トーレスを育てた名伯楽カス・ダマトにその素質を買われて、ボクサーの道を進むが、16歳の時に母親が死去。
更に不幸は続く、18歳でプロデビューし、ヘクター・メルセデスに1RTKO勝ちで初戦を白星で飾り、この年11連勝を飾った直後、父親とも云えるトレーナーのカス・ダマトが死去。
その後、通算28連勝し29戦目にしてトレバー・バーヴィックに2RTKO勝利し、WBC世界ヘビー級王座を獲得するのだが…….。
自らの不幸な生い立ちを断ち切るかのように、丸太ん棒のような左右を容赦なく相手に叩きつけるマイク・タイソン。
戦慄のその試合を見たボクシングファンは皆口を揃えて云った。
「こいつが最強や!」
「ライフタテヤマ!向正面でリキサンパワーを交わして早くも先頭!………第4コーナーから直線!猿橋の手はピクリとも動かない!持ったまま!ライフタテヤマ持ったまま!2番手はリキサンパワー!フェイトノーザンが差して来る!外からタニワカタイショウ!先頭はライフタテヤマ!これは強い!圧勝!完勝!ライフタテヤマ」
1着 ライフタテヤマ 猿橋重利
2着 フェイトノーザン 中竹和也
3着 タニワカタイショウ 鹿戸雄一
今週の日曜日に中京競馬場で行われる『東海ステークス』の前身は『東海テレビ杯 東海ウインターステークス』
そのまた前身の『ウインターステークス』が施行されて迎えた第3回。
昨今では珍しくないが、ハイセイコーを父に持つ、500キロの雄大な馬体のライフタテヤマが恐ろしく強い競馬で完勝。
「相手にならんな〜大人と子供や」
「重利、手を全然動かしとらん。ありゃバケモンやな」
2着のフェートノーザンに騎乗した中竹和也に、「勝った馬があまりに強すぎる」と泣きが入ったのも当然であろう。
単枠指定で単勝が1.5、複勝が1.1。
今ならG1を総なめするのは間違いないだろうが、当時はダートのレース体系が整備されていなかったのがライフタテヤマにとっては不幸だった。
ボクシングファンに衝撃を与えたのが、マイク・タイソンなら、競馬ファンの度肝を抜いたのがライフタテヤマ。
1986年の出来事である。
冬のど真ん中、尾張名古屋のダート決戦。
『東海テレビ杯 東海ステークス』がやって来た!