北新地競馬交友録

怖い思いをしたければ

人の趣味嗜好と云うのは様々で、たまに驚かされる事がある。
マスターの競馬友達K君は、鉄道、アイドル、そして超常現象だと云うのだからビックリである。
「マスター行って来ましたよ」
「なんだよいきなり」
「稲川淳二さんの『怪談ナイト』です」
「なんだ〜そりゃ?」
「語りが最高ですし、心霊写真とかも凄いんです」
「おめー馬鹿じゃねえの。そったらもんこの世の中にある訳ねえじゃん。第一恥ずかしくねえの?日本で3番目にオツムのいい大学の理系を出て心霊写真とかよ〜。そんなのに行くのはロクな奴はいねえだろ」
「満員御霊でした。あれで5500円は安いですね」
「……………….」
本気で信じていると云うよりは、少し怖い思いをしたい、そんな動機で公演に行く人が殆どだとは思うのだが………5500円とはふざけてるなるなりである(≧∇≦)

「もう崖っぷちだ!甘っちょろい馬券は買ってられねえぞ。発表!小倉6R、軸は竜二のジェミニズ、相手栄彦のオニダツと祐太朗のメイショウクロスの2頭。三連複のフォーメーションがいいと思うが、この時期の未勝利は何でもありだから、少し複雑な買い方をする。ジェミニズを一列目、2列目にオニダツとメイショウクロス、3列目に内からインツォリア、ゼルビーノ、アトラーニ、クリノハプスブルク、ロシニョール、イヴレアを足しての13点張り一目3千。更に、一列目と2列目は同じで、3列目に抜け目の馬全部の15点一目1千。締めて5万4千でいてこます」と結論付けたマスターだったが………。

「スタートしました!」
「あ!落ちる」
1頭軸のジェミニズがいきなり躓いて落馬寸前の態勢にマスター思わずグリーンチャンネルの画面を見て絶句。
何とか落馬を免れて態勢を立て直したものの、「ぎゃ!立ち上がってる」
向こう正面でシッカリ、ハッキリいななきながら後ろ脚2本でのスタンデングに、心臓を鷲掴みされるほどの恐怖を覚える、北新地午後1時前。
これで来たら化け物だと嘆く事半端ないマスター。

「メイショウクロス先頭で直線!うち内インツォリア!外を突いてファミリアリティー!更にその外ゼルビーノ!大外からジェミニズが脚を伸ばしてくる!」
「うぉ〜!竜二来た!差しちまえ!」
「粘る、粘るメイショウクロス!間を突いてインツォリアが先頭に立った!2.3番手争いは混戦!インツォリア先頭でゴールイン」
1着 インツォリア 北村友一J
2着 ジェミニズ 和田J
3着 メイショウクロス 森祐太朗J

「え!何?来た?来たんですよね?」
落馬寸前、立ち上がりと、余りの恐怖に頭の中が真っ白になったマスター。
京都馬主協会会員さん主催のイベントにお越しの馬主さんに確認しているのだから、馬券キャリア30年も形無しだ。
「マスター何買ってたの?」
「三連複ジェミニズ1頭軸、相手オニダツ、メイショウクロスから3列目は全頭厚薄付けて買ってます。当たりですね!当たりだ〜!わっしょいわっしょい」
「おめでとう!」

11番人気のインツォリアが頭で、配当がニャンと!8300円。
これを3000円持っているのだから万歳三唱である。
神戸元町ウインズで馬券を買っていた、熊本天草出身◯原さん、競馬友達K君、数少ないマスターの信者某外資系商社マンのY君を始め、多くの方からのおめでとうがメールやLINEに。
「どんなもんだい!」と胸を張るマスター。
249000円の払い戻し払しは、夏枯れの懐を潤してくれた。

「K君!怖い思いをしたけりゃ〜馬券買や〜いいんだよ。マニー払って心霊写真見に行くなんて馬鹿な事すんじゃねえ」
イベントが終わって店でくわえ煙草、スマホで説教するとは………相変わらず馬鹿だな〜(笑)