北新地競馬交友録

金太郎さん

日本を代表する繁華街と云えば、東の銀座、西の北新地。
北新地5千軒とも云われる店のヒエラルキーの頂点は一握りのクラブである。
座って5万円、ボトルを入れて10万円、よっしゃ!よっしゃ!でシャンパンを抜いて20万円弱。
その北新地で、5月15日に鳴り物入りで新しいクラブがオープンする。
交際接待費が締めらている昨今、クラブ活動を出来る人は限られていて、回遊魚のように何軒かのクラブを回っているのが現実で、激しいお客さん争奪戦が繰り広げられるのは間違いない。
北新地で底辺のマスターを「パパ、パパ」と慕ってくれる競馬大好きの某ホステスも、3本の指に入る老舗クラブから移籍する事となった。

「◯◯さん、今度新しくクラブが出来ますね」
「あ、◯◯と◯◯の共同出資らしいな。このご時世に勇気あるわ。押すな押すなの大盛況やったのは大昔の話しやから」と情報通は、北新地で50年も黒服をしている某高級ラウンジの専務で、京都馬主協会会員さんのお供で、マスターの店に顔を出したのは週初め月曜日の事。
奇遇と云えば奇遇なのだが、その高級ラウンジが入っているビルを持っておられるのが、これまた別の京都馬主協会会員さん。
以前、マスターの店にも顔を出してくれた事があり、以来会員さんの愛馬を応援していて、その会員さんにチャンス到来だそうな。

「マスターさん、旅行どうでした?」と熊本天草出身◯原さん。
「沖縄最高!馬券最低!なんせスマホで実況を2回聞いただけで、15万も吹っ飛んでんだからどうしようもねえよ。頭に来たからダイビング仲間に愚痴ったら、『嘘でしょ〜』とてんで信じねえんだもん。振り上げた拳でテメーをぶん殴るしかねえとは情けなさもここに極まれりだ」
「今週は大人しくなさいますか?」
「まあな、K君に借りた10万を詰めたら『競馬貯金』の残高が1万だしよ。いいわ、いいわで張ってオケラ虫になって、マニーの有り難みが判ったぜ。土曜日は慎ましやかに行くか」
「1万円だと3連単多点張りですかね?」
「運任せは先週の『NHKマイル』で懲りた。ここは原点に返ってご縁のある馬主さんの馬から行こう」

「どのレースで?」
「うむ、京都2Rダート1400未勝利のフィールドステイにする。ダート1400に矛先を向けてから常識に掛かって来た。屋根もフルキチ先輩から豊大明神に乗り替わりで陣営も勝負を掛けて来てるのは間違いねえ。もっとも心配な点もある。1枠1番は歓迎とは行かねえし、初ダートや初出走がモリモリ森昌子で、変なレース展開になる可能性がある。単勝はどうせ安いし怖ぇから枠連にしよう。大本線はスグルちゃんのアルマローランと裕太郎のメイショウクロスが同居する5枠。元取りで祥嗣のジェミニズと稜のアスターフィルの2枠の2点張り」と結論付けた。

「マスターさん、明日来られるんですよね?」
「なんでだよ?」
「だって、私もK君もお預かりしているお金がありませんから」
「何も10万立て替えてくれってんじゃねえんだ。2万にするから◯原さん頼むわ」
「え!私はいつも3千円しか持って行かないんですよ。年金生活者ですから(~_~;)」
「持って行きゃ〜いいじゃねえか。今直ぐ銀行に行けよ。日曜日には必ず返すから」
「………………」

オッズを見て配分を決めると云うマスター。
また借り!また借り!まさかり担いだ金太郎さんとはみっともない(≧∇≦)
武豊Jの頑張りで、ご縁馬主さん馬券が嵌る事を祈る。