北新地競馬交友録

右か左か

お達者倶楽部に日々近づくと、身体的能力の低下を自覚する事が少なくない。
それを表す言葉として、昔から使われているのが、目、歯、◯◯である。
近眼&老眼で、どこもかしも目の付けどころがシャープでしょ(^O^)/てな塩梅に行かない。
長い時間文字と睨めっこする根気が低下して、読書量は落ちる一方だ。
不思議なもので、読む時間が少なくなると、「これは面白い!」と云う作品を嗅ぎ分ける鼻が効かなくなる。

そこでルポルタージュ作家としだけでなく、稀代の読書家として有名な沢木耕太郎が選んだ、日本文学傑作選と云う本を手に取ってみた。
タイトルは『右か、左か』
小川洋子、芥川龍之介、阿佐田哲也、山本周五郎、庄野潤三、吉行淳之介、開高健、坂口安吾、向田邦子、藤沢周平、江戸川乱歩、阿部昭、村上春樹。
時代も作風もまるで違うが、日本文学の巨星達の短編が、綺羅星の如く散りばめられた一冊である。

テーマはまさに本のタイトル通り、『右か、左か』
沢木耕太郎自身があとがきで触れているが、13の短編小説のほとんどが、「右か、左か」の局面において、毅然とした態度や思考で決断を下すと云うよりは、立ち竦んでしまっている印象を深く受ける。
「その根底に戸惑いや不安や怯えや恐れが潜んでいる。もしかしたら、それこそが『右か、左か』における人間の自然な姿なのかも知れないと思う」と沢木耕太郎は結んでいるのだ。
それとは対極とも云える自信満々の決断でアチャ〜になったのが……..。

「いいレースがある。福島3Rのマサハヤスターはここじゃ大威張りだ。前々から口笛吹きながら瑠星が抜けてくる。まあ3馬身は離して勝つんじゃねえの。ありゃ!馬主さんが京都馬主協会の会員さんだ。こりゃ〜縁起がいいやね。単勝1万、複勝4万でいてこます。マサハヤスターに迫れる馬と云や〜、お!俺が昔からお付き合いのある、これまた京都馬主協会会員さんの愛馬テルペリオンぐれぇだろ。マニーがたんとありゃ〜な〜。このワイドに更に5万ばかし放りてえが……..」とマスターが結論付けたのは先週の土曜日。

「直線コース!テルペリオン先頭!追いかけるマサハヤスター!その差は2馬身と広がった!」
スタートして中段辺りでレースを進めると思っていたテルペリオンがまさかのハナを主張。
マサハヤスターが番手に控える展開だが、直線を向いてテルペリオンが突き放す脚色に、「だ!ダミダ〜!瑠星!馬鹿野郎!何やってんだよ」とマスターがdisって見ても態勢は決している。

「テルペリオン先頭!マサハヤスターを大きく離した!3番手はショウナンナナイロが上がって来るが!テルペリオン楽勝でゴールイン!」
2着のマサハヤスターの複勝が恥ずかしながらのよっこい庄一さん110円。
5万円買って6千円のガミ興行に、豆腐を食べて釘を噛んだような表情のマスター。
どうせ2頭立てとの見立てなら、素直にワイドを買っていたら、3万円の儲けだったのに(~_~;)

「何でそれまでの2レースとも中段から後ろを走ってたテルペリオンがハナ切るんだよ。前ったって番手でいいじゃねえか。瑠星も瑠星よ!根性がねえったらありゃしねえ。竜二なら敢然とハナに立ってるぜ。あ〜あ、アンちゃんを信用した俺が馬鹿で…………」といい泣きが入っている。
京都馬主協会会員さんのワンツーはおめでたい。
しかもマスターが個人的に親交がある馬主さんが勝ったんだから万歳三唱なんだが………..。
「右か、左か」いやいや、競馬にはそのどちらでもオッケーがある。
マスター、何十年競馬やってんの(笑)
しっかりせい!

皆様、お付き合いありがとうございました。
明日は「4万チョイやられでまだ良かったぜ。4千万?3千万?いてこまされた人間と比べたらよ〜!」
桜花賞です。
宜しくお願い申し上げます。