『OK!バブリー!!おったまげー』と叫びながら、女芸人がステージの上で熱演を繰り広げている。
人気赤マル急上昇中のバブルネタだ。
もちろん彼女は年齢的にバブルとは無縁の世代、それを見ている観客もバブルを経験した訳も無く、空虚な笑いは、みそ汁が凍るほど寒い北海道の真冬並みであるが、マスターの脳裏にマジカル!おったまげーの日々が蘇る。
当時、小さな広告制作会社に転職して数年で、20代の後半ながら週4回は北新地通い。
上通り◯協ビルの『クラブB』にもチョクチョク顔を出していた。
色々、美味しい話しがモリモリ森昌子の職業ながら、座って5万は緩くない。
そんな時、口座ホステスのお姉さんのお客で、不動産業のT社長と懇意になったのだが、この社長が仰け反るぐらいのバブル紳士だった。
「お芋こうて〜」
本通りの御堂筋に面した入り口の名物で、焼き芋の屋台を引いていたおばさん、いやおばあさんがいた。
「おい!ばあさんに云うて屋台をビルまで引っ張って来させ!丸ごと買うたる」
本当に屋台の焼き芋を全て買ったT社長、ビルの上から下までホステスに新聞に包んだ焼き芋を、各店に「おすそ分けで〜す」と配らしたのだ。
日給5万だ8万だのホステスが焼き芋を持ってビルを駆け巡る、おったまげー!
「◯◯ちゃん気に入った!今晩仲良くしょうか」
「え!無理ですよ〜(~_~;)」
「無理な事あるかい。今乗ってるベンツやるから仲良しょう。嘘ちゃうで覚書まくわ」
「…………….」
天満の顧問弁護士の事務所に緊急でつなぎを入れBまでダッシュで来させ、覚書をその場で作らせて実印をペッタンコでプリーズ、おったまげー!
「桜祭りや!桜祭り。しっかり支えとけよ」
Bの店内に本当の桜の木を持って来させ、その木に登って、桜の代わりに万札を…….その額や二束の200万両。
「よ!紀伊国屋文左衛門!」
立派な身体をしていたので、桜の木を倒すまいと黒服が運動会の棒倒しのように、4人ががり必死で木を支える、北新地午後11時過ぎ、おったまげー!
T社長に可愛がられたマスター、お代は全て社長持ちなんだから、気楽なもんであった。
今太閤で一世風靡セピアしたT社長だが、末路は哀れだったようである。
「名古屋でタクシーの運転手。いや死んだらしい。マニラに逃げたらしいよ」本当の事は誰も知らない。
そんな方と出会って濃密な時間を過ごしたもんだから、ちょっとマネーを持ったからと、クラブで威張っている昨今のお客など、なにほどの物でもない。
そんなこんなで、北新地でおったまげー!なんて事はまずないらしいが……競馬ではほぼ毎週、おったまげー!があるのだから大変だ(≧∇≦)
「本日のメェンエベント『阪神C』。スグルちゃんも、『マイルCS』で漢を下げたから、ここはビシッと勝って、ミッキーアイルがどれだけ強いか見せつけなきゃいけま〜が。まともなら相手はルメールのイスラボニータでいいだろう。このワイドに5万。年の瀬で他のジョッキーも必死だろうから、ミッキーアイルの4枠を軸に、内から保険で差し脚強烈、謙一サンライズメジャーと、将雅の本格化シュウジの1枠。意外性の漢、裕信のロサギガンティア、今日のメインをぶっこ抜いた、康誠のエイシンスパルタンの2枠に各1万。豊大明神のダンスディレクターと、芝の神様ルメールの同居する3枠に3万買ゃ〜パーペキよ」と結論付けたのだが……..。
「第4コーナーから直線!先頭はミッキーアイル!2番手にイスラボニータ!馬体を接しての追い比べ!」
大本線のミッキーアイルとイスラボニータが抜けでて、「おっしゃ!そのまま!そのまま!スグル踏ん張れ!」と絶叫するマスター。
「イスラボニータが交わしたか?後方からダンスディレクター!エイシンスパルタン!更にはフィエロが追い込んで来る!連れてシュウジ」
「おい!やめろ!来るな!将雅!来るなって!」悲鳴を上げるも…….。
「粘るイスラボニータ!ミッキーアイルも踏ん張る!シュウジが追い込んで来た!シュウジだ!シュウジ!連れてフィエロも、グーンと伸びる!イスラボニータをシュウジが交わしたか!」
1着 シュウジ 川田J
2着 イスラボニータ ルメールJ
3着 フィエロ デムーロJ
6着 ミッキーアイル スグルちゃん
直線半ばまで取った気でいた馬券が、またまた鼻もかめないゴミと化した^_^;
おったまげー!
マスター力無く、「消えてしまいてぇ。こんな事が許されていいのかよ〜」と呟いたそうな。
金曜日に続いての敗戦に、バブル紳士のTさんのように行方不明になるかと思いきや、最終日の『有馬記念』で踏みとどまるんだから、『土壇場のイーさん』の面目躍如である(^O^)/
そのお話しは明日です。
年の瀬、何かとお忙しいとは思いますが、お付き合いの程、宜しくお願い申し上げます