北新地競馬交友録

野生のハート

東京なら銀座、大阪なら北新地、神戸なら三宮が誰もが知る繁華街であるが、その昔神戸一の繁華街と云えば新開地だった時代がある。
映画館や寄席が立ち並び、飲食店が犇めきあっていた。
マスターが物心付いた頃には、全盛期に比べると随分廃れてはいたが、それでもロードショーを上演する映画館の他にも、懐かしい洋画を上映する名画座が何軒も軒を連ねていた。

「あ〜あぁ〜!チーター来い」
「ウッホ!ウッホ」
今は鬼籍に入ったパピーと見たシネマが、『類人猿ターザン』『ターザンの復讐』『ターザンの逆襲』の三本だて。
古色蒼然としたモノクロで、画面は随分劣化していたが、これが面白いの面白くないのって、三本を見てフラフラのパピーに「もう一回全部みたい」と駄々を捏ねたそうな。

主役はオリンピックの水泳で5個の金メダルをゲットしたジョニー•ワイズミュラー。
甘いマスクとは裏腹に、アクションの凄い事ったら半端ない。
鍛え上げた肉体を武器に、ジャングルを縦横無尽に暴れまくる。
白人の密猟者にゾウにまたがって突撃するかと思えば、得意の水泳で川を恐ろしい速さで泳ぎワニと大格闘。
マスターと一緒に見ていたキッズ達も大興奮で椅子の上に立ち上がって、踊りだす始末であった。

その『ターザン』が何十年の時を経て、先週『ターザン:REBORN』としてTSUTAYAでリリースされた。
最先端VFXを駆使した壮大な景観と、動物達の映像は素晴らしいのだが…….肝心のターザンがまるでダメポ。
これでもか、これでもかと繰り広げられるアクションが迫力不足なのである。
監督が『ハリー•ポッター』シリーズのデビッド•イェーツと聞いて納得。
野生のハートを取り戻せ!なるなりである。

「リーディング争いを繰り広げる圭太。今日勝てそうな馬はモリモリ森昌子だが、2Rのショウブニデルなんていいんじゃねえか。メンツを見たら弱いの弱くないのって、圭太が口笛吹きながらでも勝てる。中山ダート1800は断然先行馬が有利。枠がもう少し外目なら云う事なしだが問題ねえだろう。相手で怖いのは裕信から巧也に乗り替わりのブルーベック。バット!前走東京ゴール前200でスタミナ切れ。タフな中山に変わりゃ〜2キロ貰いでもどうする事もできまあ〜が。雄一のヤマトワイルドもそれなりだが後ろからの競馬じゃ中山なら用無し。芝からダート替わり善臣大先生のバトルエニシはちいとばかし気になるも、馬より先に大先生がバテるからよ。結論!2倍付きゃ御の字!圭太のショウブニデルの単勝3万で小遣い稼ぎと行くべ」とマスター宣言したのだが……..。

「4コーナーから直線!コーナーリングを利してショウブニデルが先頭!」
好発を決めてハナを奪ったショウブニデルが必勝態勢に入ったのを見て「よっしゃ!圭太!突き放せ!」と一声。
「前の争いは内でショウブニデル!その外からヤマトワイルド突っ込んで来る!」
「圭太!押せ!押せったら!この野郎!ふざけた真似すんな!」とマスター発狂モードに突入だ。
「200を通過!ヤマトワイルド交わした!喰い下がるショウブニデル!3番手争いはニシノリヒト!ヤマトワイルド先頭でゴールイン」
単勝1.4倍のショウブニデルが飛んだ(~_~;)

「圭太の野郎何やってんだ!コーナーリングで抜けたら思いっきりぶっ叩かんかい。チンタラしてっから雄一に突っ込まれんじゃねえか。どうしてくれるんないこの馬券をよ〜」
アントニオ猪木ばりのジャンピングストンプで床に投げ捨てた馬券を踏み倒すマスター(≧∇≦)
「確かに直線が短い中山ですから、あそこからビシッと追ってれば…….何か余裕がある追い方でしたね」と競馬友達のK君もズケ取りに余念がないもんだから、益々エスカレートするマスター。

「そうよ!地方から中央に来て暫くは、必死さが感じられたが、やれリーディングだ!やれ卒なく乗るだの云われて調子こいてんじゃねえか。ギラギラしたもんが感じられねんだよ最近の圭太は。大体が………」延々続くこき下ろにウンザリして、両手を広げて「どうにもなりませ〜ん」のポーズは熊本天草出身◯原さん。

確かにこの日曜日。
1番人気、2番人気を馬券どころか二桁着順までぶっ飛ばす戸崎J。
スマートに乗る事なんて求めてない!
野生のハートを取り戻せ(♯`∧´)