沢木耕太郎と云うノンフィクション作家がいる。
一番有名な作品としては、若者のニューバイブルと云われた『深夜特急』と云えば皆さんもご存知であろう。
その沢木耕太郎が小説にチャレンジした『波の音が消えるまで』
メジャーなサーファーを目指した主人公が、ハワイのノースショアで大波に挑みサーファーとして致命的な怪我を負う。
夢を絶たれた主人公が、ひょんな事からマカオでバカラに魅入られて行く物語である。
その『波の音が消えるまで』の中で主人公と知り合いになった劉さんの言葉が勝負と云うもの本質を鋭く突いている。
「ワン・ショット!一発勝負、一か八かの怖さは、それに中毒するということだ」
更に劉さんはこう続ける、「すべてを賭けることの恐怖と、それを乗り越えたときの解放感と、当たったときの快感。それを忘れることなど誰にもできないからだ」
バカラと同等に扱うとお叱りをいただくのは覚悟の上であるが、馬主さんにもそう云う方がいる。
「一千六百万!ございませんか!ハイ!一千六百万いただきました。一千七百!一千七百万!さ〜ガジノドライブ産駒!タイムウェルテルの牝馬!社長!もう一声!お願いします!」
京都馬主協会のお偉いさんS澤先生が購入するのは、毎年セレクトセールで一頭。
「な〜んだ一頭か」と云うなかれ、2千万円近くのマニーをお馬さんを信じて購入するのだから、家にマニーの成る木があるならともかく、とんでもない冒険である。
「マスター!今回は勝負掛けとる」
「そうですよね。そろそろ勝ち上がりのお尻が迫って来ましたから、ビシッと決めてもらわないといけません」
「せや!何せ新馬戦1.8倍断トツの一番人気で飛んどるさかい」
「仲のいいスグルちゃん必勝体制で臨んで3着は泣けて来ますよね。今回の屋根は?」
「ルメールや」
「それは、それはよく押さえれましたね。もちろん最強クラスのジョッキーですが、たまにえ〜?ってレースしますけどね」
「そこや、そこやがな。エージェントに任せっきりでは心配やから、通訳を頼んで乗り方をガッチリ伝えるんや」
「自前ですか?」
「もちのロンやがな!」
マスターとS澤先生との水曜日の携帯での会話。
馬券は買わず、ピュアな気持ちで応援するつもりのマスターだったが、自前で通訳まで用意するとは半端ない∑(゚Д゚)
「先生の心意気にミーも打たれました。赤貧洗うがごとしで大したマニーは張れませんが、馬券でも応援させていただきます!」
「なんせ一年一頭やから、勝ち上がって貰わないとエライこっちゃ。マスターも応援してや頼むで」
「かしこまりました。1Rは丁度那覇空港に着いたぐらいですから、携帯で実況聞かせて貰います」
「第4コーナを回ってセトノチーターが先頭!続いてブボナ!ビーバーテキーラ上がって行きました!外からナオミベガス!ナオミベガスが凄い脚!残り200を切った!セトノチーターを交わし切って先頭!単独2番手にオールスマイル上がった!ナオミベガスを追っているが!ナオミベガス!ナオミベガス!ゴールイン」
旅先那覇空港の預け入れ荷物のターンテーブルの前で、ガッツポーズのマスター。
単勝2万円、馬連ナオミベガスから2番人気セトノチーター、3番人気オールスマイル、4番人気アルマレイオミに各1万円。
5万円張って、10万6千円は上出来だ。
LINEで弾けているS澤先生ファミリー口取りの写真が送られて来た。
「先生!お見事!ワンショット」とマスター。
ルメールJ!いい仕事するね〜(^_^)
皆様、お付き合いありがとうございました。
明日はいよいよ松本伊代!『天皇賞』のお話しです。
宜しくお願い申し上げます!