時代の流れなのであろうか?
最近マルチな才能を持つ人物に触れる機会が減ってしまった。
スポーツ選手は優等生的なコメントを十年一日で繰り返す。
政治家は結論や結果を出さない事が己の政治生命を延ばすかのように、議論を堂々巡りさす。
お笑い芸人は延々とくだらない話しを飽く事なく垂れ流し続ける。
何かに特化した人達が幅を利かす世の中で、テリトリー外の事にチャレンジする人間は異質な存在として扱われる時代。
要するに判り易い人間が蔓延しているのである。
だから、その枠から少し飛び出た某芸人が書いた小説が、あたかも凄い作品であるかのように持て囃されるのかも知れない。
景山民夫と云う人物がいた。
放送作家、ミュージシャン、落語家、超常現象評論家、そして作家。
警察官僚のおぼっちゃまで、慶応義塾大学を中退し、USA放浪の旅に出る。
『遠い海から来たCOO』で直木賞を受賞するが、まあ〜流し読みすればよかろうてな内容である。
景山民夫の何たるかは『転がる石のように』に見事なまでに集約されている。
Amazonの作品紹介にはこのように記述されている。
『’60年代最後の年、22歳の上山哲夫は、アコースティック・ギターひとつを持ってアメリカへ旅立つ。子供の頃、ベース・キャンプの金網の向こう側にしかなかった「アメリカ」を求めて。西海岸から東へたどる哲夫が出会ったものはベトナム戦争の影とヒッピーたち…。巨大な異文化に裸で身をさらし、己れの根を必死に捉まえようと彷徨する若者の姿を鋭い感性で描きだした青春の書』
マルチな才能を、これでもか!これでもかと開花させた景山民夫であるが、ある時期を境に某宗教に傾倒する事となる。
『鰯の頭も信心から』何を信じようが個人の自由であるし、救いとなる場合も数知れず。
しかし、景山民夫が信じた宗教が、いささか世間の評判が宜しくなかった。
タレントとして、作家として、文化人としてインテリゲンチャを中心に絶大な人気を誇り、多方面に渡った友人達が離れていってしまった。
『転がる石のように』駆け抜けて来た人生が停滞し、まるで転がらなくなってしまったのである。
「マスターさん!中京4Rも期待出来ますね」
「そうよ、カフジプリンスの馬主さんも中京のご当地馬主さんだ。豊大明神にもう一丁宜しく哀愁よ。3Rで6万になったマニーを単勝1万5千、複勝4万5千に張り付ける!」とマスター。
「第4コーナを回って直線に向かいました!先頭はコンフィアンサ!間4番チャイナドレス!外がゴールドクリスエス!3頭が横に広がった!外から追い込んで来るのがカフジプリンス!200mを通過しました!」
5分のスタートから中段に構えた武Jとカフジプリンス、徐々に位置取りを上げて追い込んでくる。
「豊!豊!差せ〜!こんにゃろ!差しやがれ!」
ダイニングで洗い物をしていたマミー芳子ちゃんが茶碗を落とすぐらいの大絶叫!
「内ラチ沿いコンフィアンサ!外からカフジプリンスが捉えて先頭に代わった!カフジプリンス!カフジプリンス!ゴール」
単勝340円が1万5千円的中!
複勝140円が4万5千円的中!
締めて払い戻しが11万4千円でマスター!ニコッコリタンメンだ。
「おっしゃ!乗って来たぞ。今日は阪神最終にこれぞと云う馬がいて、梅田ウインズに出張ってから店に行くつもりだったが、まさかの出走取り消し。夕方からティップネスのプールへ行く予定にしてた。バット!こうなりゃホームでノンビしてる訳にゃ〜行くまいて。中京7Rまで時間があるから神戸元町ウインズに突撃すんぞ!オメー達、昼は好きなもん食っていい。俺のオゴリよ」
中京3Rから4R、あら嬉しやで馬券が転がったマスター。
いつまで転がり続けるのか?
景山民夫じゃないが、石も馬券も無限に転がり続ける訳ではない。
そのお話しは明日です。
皆様、お目汚しのお付き合い、宜しくお願い申し上げます。