北新地競馬交友録

もうあかん やめます!

「もうあかん やめます!」
「格差社会を是正せよ。身長の格差は当店で。人は見た目が9割だから!」
「横綱も、この店も、土俵際。出直しセール」
そんな垂れ幕が堂々と出ている、浪速の名物靴店『靴のオットー』さんが閉店する。
背が5センチは伸びて見えると云う、シークレットブーツ販売の本家本元である。
マスターの店のある北新地から2号線を東に、西天満交差点のチョイと先に『靴のオットー』さんはある。
「もうあかん!」と泣きを入れ続けて20年以上。
しぶといのである。

「マスターさん、今週は『雄太貯金』出動ですよね?」
「う〜ん、どうかな?馬券になるかならねえか、かなり微妙な馬なら2頭いるんだが……」
「普通の貯金は置いといたら利子がつきますが、『雄太貯金』は無利子ですよ。でも、貯金は使えば減りますが、『雄太貯金』は増えるんですから!」
「当たればだろ。外れたらどないするんない?◯原さん責任取れんのかよ。あ〜ん(`_´)ゞ取れねえだろが。ど素人が俺の尻かくような事いうんじゃねえ!」
◯原さんに催促されて、マスターいたってご機嫌が宜しくない。

「48万5千円もあるんですから、得意のご機嫌伺いでチョコっと買いましょうよ。もちろん馬と馬券の種類はお任せします」と競馬友達のK君。
「しょうがねえな〜。まあオメー達も出資者だから、無下にする訳にもいけまあが。よっしゃ!土曜日のスリーミュージアムとデビルズハーツは全然足りねえ。買うなら日曜日の新馬レッドエルディストと最終のプルメリアスターの2頭だろ。3着なら来てもおかしくねえと思う。枠順が発表になったら、どうすっか決めっから、土曜日は大人しくしとこうぜ」とマスター。

バ!バット!
「残り200!スマートラファエルが抜けた!外からデビルズハーツが凄い脚で追い込んでくる!スマートラファエルを追い詰めるデビルズハーツ!内外離れてゴールイン!最後は2頭が並びました!」
土曜日の中京メイン『中京スポニチ賞』を8番人気のデビルズハーツがぶっこぬいた。
家でグリーンチャンネルを見ていたマスターに、◯原さんからの鬼電が鳴り続けるも、シカトを決め込むマスター。
土曜日はないと宣言したもんだから、ぐつが悪くて電話に出れないとは、常日頃中谷J研究家と胸を張ってのに情けない極みである。

「おはようさん。今日も寒ぃね〜。◯原さん元気してたか?K君はどうかな?風邪とか引いてねえか?こんだけ寒ぃと気をつけなきゃな。本日もシクヨロ!」
日曜日、10時前から神戸元町ウインズに登場。
いきなり猫撫で声で、2人の機嫌を取っているとは情けない。
「ブルブルですよ。財布がね」
「……………..」
「先週の新馬ブライスガイもないって云ってましたよね、マスターさん」
「…………….」
「読みが甘いんじゃないですか?あ〜あデビルズハーツの単勝1750円、複勝でも320円ついてますよ、1番人気との馬連が…………」
「……………う!うるせい!うる星やつらのラムちゃんよ!当てりゃいいんだろ!当てりゃ〜よ。も〜全く持ってオメー達には頭グラグラよ」

非難ゴー!ゴー!レッツゴーで、冷静さを欠いたマスター。
賭け事はクールでなきゃいい結果が出ないのは、ちょんまげ結って、ふんどしで歩いていた江戸時代から決まっている。
よしゃいいのに「エイヤー!」で飛び込んでしまったマスター。
中京最終レースが終わって、「もうあかん やめます!」と、『靴のオットー』の社長とタメを張るぐらい泣きが入るお話しは木曜日です。

皆様、お付き合いありがとうございました。
明日も宜しくお願い申し上げます!