競馬ファンなら、誰でも思い出のレースと云うのはある。
「スペシャルウィーク豊大明神で大儲けよ!」
「オグリのラストランには泣けた」
「テイエムオペラオーに乗ったら和田は神だ!」
そんな純粋にレースに対する思い出もあれば、その時の自分の境遇と併せて忘れられないレースもある。
○原さん。
熊本県天草出身68才。
毎週、3千円を握りしめて神戸元町ウインズに通う、ヨーダみたいなおじいさんだ。
その○原さんが応援してやまないのが藤岡祐介J。
そのキッカケとなったのが、今を遡る事8年前。
阪神競馬場の『大阪城ステークス』なそうな。
当時、勤めていた会社の再雇用期間が終わり。
年金が貰えるまでどうしようかと悩んでいたところに、奥さんが体調の不良を訴えて検査入院。
結果は…………….即刻入院。
一人娘は嫁いで東京へいっちっちで、○原さんはただただうろたえて、夢遊病者のように病院と家を往復する日々。
病院から帰って来て、板宿の自宅で、ぼんやり競馬中継を見ていたら、「スーパーホーネット!スーパーホーネット!外からホッコウソレソレ、ジャリスコライト……..」
ニャンと!1800m走って、7着までが仰け反りのわずか0.1差。
ハナ、クビ、クビ、ハナ、ハナ、クビとは恐れ入谷の鬼子母神だ。
「あれ見て、説明は出来ないですけど、涙が止まりませんで」
「そのレースは覚えてる。確か土曜日だったと思うが、阪神競馬場に行ってた。ありゃ凄いレースだったぜ。園田のキムケンのタガノデンジャラスが最高方からぶっ飛んで来て……..」
「それ以来、藤岡祐介Jとスーパーホーネットを応援し出したんですわ」
「G1取らせてやりたかったけど、2着が3回だっけ?1400mのG1がありゃ間違いなく取ってたはずだ」
「月並みな云い方ですけど、勇気を貰ったと思うんですわ」
人生、谷あり山あり。
ずっ〜と谷、谷、谷のマスターみたいな人間は、少々の事ではへこたれないが、それまで慎ましやかながらも順調に生きて来た○原さんが、随分落ち込んでいたであろう事は、想像に難くない。
その○原さんの気力を呼び覚ました
競馬は、それこそ捨てたもんじゃないと云う事だ。
その藤岡祐介J。
マスターは一度も会った事はないが、知り合いの馬主さん達が口を揃えて云うのは「あいつは、いい奴や」
最近、全然、乗せて貰ってなくても、ご縁のあった馬主さんの馬が勝てば「おめでとうございます!」のメールが月曜日には必ずくるそうな。
レースでは、一つでも上の着順をと、一生懸命追う姿には納得が出来るとも。
一昨年は19勝しか出来ず、低迷期が続いたが、今年は既に39勝(8月23日現在)で全国リーディング20位と云う立派な成績。
「祐介!キョロキョロすんな!」ヘビーな競馬ファンから野次を飛ばされる事も少なくなった。
その藤岡Jが小倉の最終レースに騎乗するのがフォースフィールド。
前走で未勝利を見事な末脚で勝って500万のレースに挑戦だ。
「豊様のメイショウルンバを買おうと思ったが、さすがにプラス28キロじゃ今回は無理だろ。フォースフィールドの馬主さんは、京都馬主協会のお偉いさんだ。何かとお世話になってるし、ここは1番応援させて貰おう。単勝は怖いから複勝でと思うが、K君、オッズをプリーズ」
「2.1ー2.8です」
「上等!上等!福島上等カレーよ」
「乗ります」
「乗らせていただきます」
「よっしゃ!祐介頼むぞ!」
話しの続きはまた明日です。
スイマセン(≧∇≦)
怒らずにお付き合い宜しくお願い致します。