北新地競馬交友録

トーナメント

甲子園球場で連日熱戦が繰り広げられている『全国高等学校野球選手権大会』
茹だるような暑さの下、一回負けたら次はないトーナメント戦だ。

「コチラ!マスター!聞こえますかどうぞ」
「こちらKです。感度良好ですどうぞ」
「了解です、どうぞ」
「………..マスター、携帯で話してんですから、大昔のトランシー バーごっこ辞めましょうよ」
「すまねえ、すまねえ。◯原のとっさんは元気してたか?」
「午前中は顔出したんですが、午後から甲子園で九州のチームが、第3、第4試合に出るので応援に行くとかで……….」
「甲子園行ったのか?マジで迷惑な奴だな。じいさんなんだから熱中症で倒れたら、周りに迷惑掛けるだろうが」

数少ない休みは、趣味のダイビングをと云う事で、沖縄に行っているマスター。
相も変わらず、神戸元町ウインズで闘っていたK君に携帯で繋ぎを入れた。
「で、お預かりしている、少ない諭吉さんはどうします?明日はご贔屓の中谷Jのモズライジンが10Rで出ますよ」
「少ないは余計だっちゅ〜の…………..」

沖縄と云うところは、競馬不毛の地である。
一般紙はもちろん、スポーツ新聞にも競馬欄はなし。
『競馬エイト』とか『競馬ブック』なんて、存在すら知らないのが普通だ。
日曜日のレースを検討するには、ネットを駆使するしかない。

「モズライジンはもちろん期待してっが、1Rのマーブルフレンテに気がある。この相手ならいい勝負になるはずだ。何より馬主さんは、普段からお世話になっている『京都馬主協会』の役員さんだしよ。単複頑張れ馬券行ったらんかい!」
「わかりました。全額でいいんですか?」
「あたりマエだろ。高校野球と一緒だ。負けたら後がねえトーナメントよ」

日本本土を南下する事ウン百キロ。
沖縄で気合い充分のマスター。
「1Rで当たればどうします?」
「つまんねえ事聞くない。モズライジン単複に全額転がすに決まってんじゃねえか」
「りょ〜かいです」
まずはマーブルフレンテの松山J頼みまス!