北新地競馬交友録

『口取り物語』VOL5 偶然と云い切るには その1

今年もやって来ました新馬戦の季節。
馬主の方達とお話ししていて、1番楽しみにしているのが新馬戦とは、よく聞くお話し。
勝てば先はひょっとして「ダービー!オークス」と夢が広がるし、好走すれば「次こそは!」と気合が入る。
逆に見所がないレースでもしようもんなら、一気にブルーな気分。

「Tさん、惜しかったですね。でも先行力が半端ないです。次は熊ちゃんが、SMAP唄いながらでも勝ちますよ。楽勝!楽勝」
「マスターありがとう」
「人気し過ぎて馬券買えませんね、ガハハ」
11月半ばの新馬戦で、京都馬主協会会員、おしどりご夫婦で有名なTさんの馬が芝1200で2着。
果敢な先行策も、最後チョイ差されて涙を飲んだ。
新馬勝ちこそ出来なかったが、次走は確勝だ。

中一週で迎えた第2戦。
もちのロンで1番人気。
バット!鞍上の熊ちゃんが番手に付けて大名レースのはずが直線失速。
押しても叩いてもウンともスンとも云わないんだから大ショックだ。
ニャンと!18頭立ての13着だって云うんだからマジ泣けてくる。
「Tさん、何かの間違いでしょ。ご機嫌が悪かったのかな?次こそ勝ってくれますよ」
「…………………」

放牧を挟んで年が明け3月の第3戦目。
確勝を期してダート1400に出走するも16頭立ての16着。
頭に来た!の第4戦目が、14頭立ての13着、一頭除外の13着で、実質は2戦とも最下位。
これにはTさんはもちろんショックだろうが、マスターも真っ青。
「SMAP唄いながらでも勝ちます!」なんて云った手前、どうにもバツが悪い。
馬主席でTさんのお顔を見ると、コソコソと逃げ出す始末だ。

新馬戦が始まる6月に、最後の闘いと芝に戻して出走するんだが、その前にTさんにとって大ショックな出来事が………..。
「どうしたんですか、こんな時間にもうお帰りですか?」
「マスター入厩直前に小別けの2歳が死んだ」
「え!」
「外厩の火事に巻き込まれたんや」
かける言葉もないマスター。
お昼前に競馬場を後にするTさんご夫妻。

どこまで続く泥濘ぞ(≧∇≦)
「天は我を見放したか」故高倉健さんも顔負けの厄災が降りかかる。
ところがドッコイ!最下位で喘いでいた馬が憑かれたように走りだす。
まさか、6月に未勝利を走ってた馬が『菊花賞』に出走するまで昇りつめるとは、お釈迦様でも……………。
その話しはまた明日。

皆様、お付き合い宜しくお願い申し上げます。