絶縁。
Wikipediaによると、「交友関係、師弟関係を断つ事を云う」とある。
小学校の授業で習ったのを覚えている方もいるだろうが、人間は社会的生き物。
人との繋がりなくして、生活を営む事は出来ない。
哀れその絶縁宣言をされたのがマスターだ。
3年目の初勝利。
馬主さん、その奥様と手に手を取って大喜びしたのが前回までの話し。
「お〜い!全員集合。今から口取りに行くからな。オメー達あんましハシャギ過ぎんじゃねえぞ」
「は〜い!」
サラリーマン時代も含めると、北新地歴は30年を軽く越えるマスター。
たこ焼き屋の大将からクラブホステスまで、交友関係は極めて広い。
「100回走ったら99回は勝つ!」
「祝い事は賑やかなのが1番!」
「女はキレイどころに限る!」
北新地のホステス達を密かに呼び寄せていた。
勝てば口取りを華やかに彩り、万が一負ければ何もなかったかのように撤収する。
そんな作戦だったのだが見事勝利。
勝馬馬主専用エレベーターに、馬主さん、奥様、マスター、そしてホステス達。
とにかく興奮状態なんで、なんでキャピキャピしたのが一緒にエレベーターに乗っているのか判らない奥様。
さすがにウィナーズサークルに並んだ時に気が付いた。
どぶろっくじゃないが、「もしかしてだけたど〜 もしかしてだけど〜 これってホステスじゃないの〜!」
写真撮影が行われている間は、無理に笑顔を作ったものの………….。
明らかに不機嫌モードに突入。
馬主さんの名誉のために云うならば、これはマスターの一存。
責めを一身に負うのはあたり前だ。
空気を察したマスターが「どうもすいません。出しゃばった事をしまして」
薄くなったオツムを深々と下げるも、奥様プイと横を向いてしまった。
その怒りに満ちた顏の怖いの怖くないのって。
帰りの車の中で、馬主さんに「あんな人とは今後一切付き合わないで」と云い放った奥様。
絶縁宣言だ。
3年目の涙。
感動のフィナーレが一転。
観音様を夜叉に変えたマスターに弁解の余地はない。
その絶縁宣言が撤回されるのに要した期間はなんと1年。
マスター!しっかりせんかい!
次回『口取り物語』はミホノブルボンの背に乗って。
お楽しみに。