北新地競馬交友録

やまい

「元気ですかー!」
“燃える闘魂”アントニオ猪木が黄泉の国へ旅立った。
プロレス好きの親父の影響で、キッズの頃からテレビに釘付け。
ジャイアント馬場を贔屓にする親父への反発もあったのか、断然アントニオ猪木派だった。

新日本プロレスを立ち上げた際はかなり苦労したようだが、それも軌道に乗った頃に、半端ない敵役を連れて来た。
サーベルを口に咥えてクイクイ!インドの怒れる猛虎、悪の化身タイガー•ジェット•シンである。

ジャイアント馬場率いる『全日本プロレス』の興行には連れて行ってくれるが、アントニオ猪木率いる『新日本プロレス』は「アカン」の一言。
どうしてもタイガー•ジェット•シンとの因縁試合が見たくて、親父の財布からマネーを拗ねて、大阪府立体育館にダッシュしたのもいい思い出である。

そのアントニオ猪木が、難病のアミロイドーシスに襲われた。
Google先生によると、アミロイドと呼ばれるナイロンに似た線維状のたんぱく質のかたまりが、全身のさまざまな臓器に沈着し、体の異常を起こす病。
痩せさらばえた身体をベットに横たえた姿が公開されたが、お気の毒の一言では片付けられない映像であった。

あんなに強靭な肉体と精神を持ったアントニオ猪木でも病には勝てない事を目の当たりにした。
心からご冥福を祈らせていただきます。
合掌。

「なんじゃ!こりゃ。一番人気から四番人気が一頭も馬券にからんでねえ。武史のジェラルディーナはともかく、伊藤工務店のロバートソンキーや、正海のウインキートスなんて、単なる賑やかしとしか思ってなかったのにョ。この逆立ちしても取れねえ3連単がわずか24万だってんだから、冗談はよし子ちゃんの林家三平師匠だっちゅ〜の。やめた!やめた!もう馬券なんて買わねえぞ。」のはずが……..。

「マスター、おはようございます。」
「ああ、おはようさん。」
「○原さんから、マスター馬券はお休みと聞いてましたが、一応、ご挨拶と云う事で。」は、新型コロナ騒動でお金を使う機会が減って、ますます貯金の残高が上昇中。
堂々のプライム企業に勤める競馬友達のK君である。

「誰が馬券買わんの?あ〜ん。秋のG1第一弾『スプリンターズS』だってぇのに、敵に背をむける馬鹿がいる訳ねえだろうが。」
「ですよね。もちろんそう思ってました。」
「何をこの野郎、調子のいい事ぬかしやがって、どうぜ馬券病に取り憑かれてるなんて思ってんだろう。いいさ、いいさ、そうやってたんと人を馬鹿にすりゃ。あ、昨日、借りていた6万に10足して振り込んどいた。」

「さすがです。」
「何が?こんなところで芋ひいてられっか!発表!馬単ボックス、内から恭介のテイエムスパーダ、若武者弘平ウインマーベル、すぐるちゃんのナムラクレア、謙一のメイケイエールの12点一目3千と5百。トリガミ回避、ナムラクレアとメイケイエールのワイドに8千。締めて5万でいてこます。恭介が気合いを入れて逃げればいい馬券になる。」と結論付けた。

故アントニオ猪木を引き合いに出すのは心が痛むが、北新地の盆暗のように違う不治の病に冒されている人間もいるようで。