北新地競馬交友録

サイン馬券

雨は降っていないのに、耳元でトタンを叩く雨の音が控えめに、たまに強く流れている。
蔓延防止基本措置により、天下御免の引き篭もりで、寝たい時に寝て、眠たくない時はいつまでも起きている。
その生活が2ヶ月近く続いたのだから、体内時計が狂ってしまった。
措置が解除になってもリズムが戻らず、まともな時間に寝れないものだから、致し方なしにYouTubeの『誰でも5分で眠れる雨音』を聞いていると云う訳だ。

そんな、ふざけた理由ではなく、眠れない夜を過ごしているのが、ウクライナの人々。
激しい音を立てて着弾するロシア軍のミサイルは許し難い。
「2日もあれば占領出来る。」とたかを括っていたロシアの思惑が大きくはずれ、ごく一部ながら攻守逆転で押し返している地域もあると云うのだから、ウクライナの兵隊さんには、畏れ入谷の鬼子母神と云ったところである。

その立役者は、肩に担いでロシアの戦車や装甲車をコテンパン太郎に破壊している『ジャベリン』。
目標をロックオンで発射すれば、戦車に着弾して、まず小さなサブ弾頭が爆発。
その後により強力なメイン弾頭が爆発して装甲を貫通する優れものだ。
お値段はワンセット6800万円とお高いのも納得の性能。
昔からある擲弾を大幅にグレードアップした武器なのである。

ウクライナの守り神ジャベリンを兵隊さん達は、『聖ジャベリン』と呼んでいるらしい。

「え!何?何やってんだョ!」
『フラワーカップ』で逃げるはずのパーソナルハイ、二の脚がまるでつかずに中団を追走。
今まで、そんな競馬をした事がないのだから、ゴール前追い込むふりだけでジ・エンド。
堂々の6着で、「康太の野郎、道で会ったら意見してやる。」と吐き捨てるように云っても時既に遅し。
勝ったスタニングローズとの馬連14.9倍を一万円持っていたのだから傷は浅くない。
推奨した○原さんを責めなかったのがせめてもの救いとは、ニャンともお粗末な結末なのである。

「マスター、おはようございます。北新地はどうですか?解除されて賑やかでしょう。」は競馬友達のK君。
「まあな、守秘義務があるから名前は出せねえが、G1馬のオーナーを先頭に、大勢の馬主さん達がスケてくれて大助かりだ。持つべきものはマニー持ちのお客さんて事だな。これで馬券が当たれば万歳三唱なんだが、まるで当たらねえ。某馬主さんに、『ウケ狙いでわざと外してるでしょう。』なんて揶揄われる始末だ。そんな人間が何処におるんない?とモンチの一つも云いたいところだが、へへへと頭を掻いているんだからどうしょうもねえさ。」
日曜日の朝のお約束ボヤキ節が炸裂しているマスターなのである。

「まあ、まあ。今日のG1『高松宮記念』でドカンと当ててください。」
「ドカンとは結構だが、こったらレース当たるか?混戦も混戦。今週うちに寄ってくれた、テレビでしょっ中見る競馬ライターも、H新聞の競馬記者も『今年は難しいです。』と泣きが入っていたぜ。調教からお勧めはプリンスのグラナディアガーズらしいが、大外枠が厄だってんだ。」
「そうなると、やはりレシステンシアですかね。」
「まともならな。チョイと気が付いんだが、ウクライナの方でドンパチしてるだろ。そこで兵隊さんが、ロケット砲を手持ちで大活躍してるそうじゃねえか。グラナディアガーズの馬名の意味ググってみ。」
「イングランドの擲弾兵近衛連隊です。」
「な!被るだろうが。完全にサインが出てんじゃん。」
「え!………………………サイン馬券ですか。」

「どうせまともじゃ当たらねんだ。発表!グラナディアガーズ一頭軸3連複。相手内から1.7.9.13.14.17の15点張り一目3千円。グラナディアガーズとレシステンシア、枠の4ー8をおまじないで5千でどうだ。」と結論付けた。
あまりの当たらなさに、サイン馬券にまで手を出したマスター。
中京の鬼!福永J!助けてやってください。