『ひと夏の経験』by ももえ山口
あなたに女の子の一番
大切なものをあげるわ
小さな胸の奥にしまった
大切なものをあげるわ
愛する人に 捧げるため
守ってきたのよ
汚れてもいい 泣いてもいい
愛は尊いわー
誰でも一度だけ 経験するのよ
誘惑の甘い罠
あなたに女の子の一番
大切なものをあげるわ
綺麗な泪色に輝く
大切なものをあげるわ
愛する人が 喜ぶなら
それで倖せよ
こわれてもいい 捨ててもいい
愛は尊いわー
誰でも一度だけ 経験するのよ
誘惑の甘い罠
梅雨の終盤、真夏のギンギラ太陽が近づいてくると思い出すのが、百恵ちゃんである。
新型コロナウイルスにササラモサラにされている今年とは違って、ニャンとも牧歌的な時代であった。
「マスターさん、おはようございます。国が大変な事になってます。ニュースを見て心配で心配で。」は熊本天草出身の○原さん。
故郷の熊本県天草市には、避難勧告が発令された。
「今すぐ、命を守る行動をとってください。」
本当は自分達が住んでいる東京にしか興味がない癖に、わざとシリアス顔で云うアナウンサー。
梅雨も後半となり、被害の様子が気になる。
「そうよな〜。毎年、たんと雨が降ると云っても、裏に山なんかがあると生きた心地がしねえだろう。まして、お年寄りには心細いの極みだ。」
「もう両親はとうに亡くなっていますが、身内が何人か住んでますので。神戸とかの都会と比べたら、想像も出来ない田舎。その分、隣近所の情は厚いですから何とかなるとは思うんですが………….。」
「お宅もョ〜、いつまでも神戸に根を生やしてねえで、国に帰りゃ〜いいのに。」
「高校を出て、帰るのは年に一度あるかなしか。居場所もないですから。さすがに死ぬ時は天草でとは思っていますけど。マスターさん、看取ってくれませんしね。」
「あたし前じゃん、赤の他人なんだから。ミー自体が施設に入っているマミーが召されれば、ブラザーとは疎遠だし、実質天涯孤独みてぇなもんョ。最後は神戸元町ウインズの前でお釈迦になるんじゃねえの。」
「……………明日の日曜日は阪神競馬場に行くんでしょ?」
「ああ、ひとかたならぬお世話になっている京都馬主協会会員さんの新馬がデビューだからョ。規制で口取りも出来ねえのはつまんねえが、何ヶ月ぶりかの参戦だ。その前に今日の福島2Rで、これまた親しくさせていただいている、京都馬主協会会員さんのズールーが、菜七子で必勝体制。相手は3枠圭太のリングアベルと、同じく3枠木幡の小倅巧のダイユウローズの2頭。枠の3ー4に2万で軽くジャブを打ってみっか。」と結論付けた。
百恵ちゃんは、誰でも一度だけ経験するのよ〜と歌ったが、藤田菜七子Jの馬を軸にするのは初めて経験のマスターだが……….さて。