『夜と朝の間に』by ピーター
夜と朝の間に ひとりの私
天使の歌をきいている
死人のように
夜と朝の間に ひとりの私
指を折ってはくりかえす
数はつきない
遠くこだまをひいている
鎖につながれた むく犬よ
お前も静かに眠れ
お前も静かに眠れ
夜と朝の間に ひとりの私
散るのを忘れた
一夜の花びらみたい
夜と朝の間に ひとりの私
星が流れても
祈りはしない
夜の寒さにたえかねて
夜明けを待ちわびる 小鳥たち
お前も静かに眠れ
お前も静かに眠れ
一時期は競馬場より、神戸元町ウインズ一本だったマスターだが、諸般の事情で、最近とみに馬主さんと競馬場に同行する事が増えた。
勝てば万歳三唱、馬券圏内なら最低限の仕事はした。
掲示板なら、悪くても3着はあったと乗り役の悪口を並び立てて、馬主さんより先に怒りまくる。
なにせ10年以上、馬主さんと競馬場に通っているのだから年季が入っている。
バット!タイムオーバー、これだけは繕いようがない。
そんな事態が発生したのは、この日曜日の2R。
同行している京都馬主協会会員さんの愛馬が、両手で眼を覆いたくなるようなビリッケツ。
マスター、「豊の馬を負かせば頭まであるでしょ!」レース前には大ものを垂れていたのだから事態は深刻である。
「和風ナポリタン」
「俺もそれにするか」
「マスターは?」
「……….トマトジュースある?」
「いえ、置いてないんです」
「じゃあコーラで」
「食べへんのかいな?」
「お腹が空いてなくて」
この大阪場所で大関に昇進した朝乃山ものけぞるぐらいの大食感のマスターだが、無観客開催で唯一空いているレストランにおっちんするも、どうにも食べ物が喉に通るような気がしなかったそうな。
それほどタイムオーバーにショックを受けていたのである。
「第4コーナーから直線!クリノイコライザー!ムチを振るって先頭!ジワ!ジワ!とサンデーミラージュ!外からロードグリュッグが迫る!」
「マルコメ!マルコメ!マルコメ!」机を叩きながら狂ったように叫び出すマスター。
「サンデーミラージュ先頭に替わる!2頭が抜け出して200を切った!3番手からキッズアガチャーが前を追っている!サンデーミラージュ振り切って2馬身のリード!離れた外からキッズアガチャーも2着まで!サンデーミラージュ先頭でゴールイン」
「豊!遠慮せい!」と怒声を張り上げたところがゴール。
5番人気での完勝なのだからこれは嬉しい。
60歳前後のおっさんどもが、ハイタッチの嵐だ。
あまりの狂喜乱舞ぶりに、馬主席にいた他の馬主さんたちの失笑を買っているのだが、そんな事は気にもしていない。
口取りをしながら、「先週に続いて2週連続。やっぱ持ってますねミーは!」
「……………..ん?ま〜いいか」と京都馬主協会会員さん。
『夜と朝の間に』がピーターなら、『タイムオーバーと優勝の間に』がマスター。
シオシオのパーでへこたれて、コーラをチュウチュウと啜っていた事は見なかった事にしよう!
松若J!アッパレ!だ。