『誰もいない海』 by トワ•エ•モア
今はもう秋 誰もいない海
知らん顔して 人がゆきすぎても
わたしは忘れない
海に約束したから
つらくても つらくても
死にはしないと
今はもう秋 誰もいない海
たったひとつの夢が 破れても
わたしは忘れない
砂に約束したから
淋しくても 淋しくても
死にはしないと
今はもう秋 誰もいない海
いとしい面影 帰らなくても
わたしは忘れない
空に約束したから
ひとりでも ひとりでも
死にはしないとひとりでも ひとりでも
死にはしないとルルル ルルルル
「マルコメ粘れ!我慢せい!」ほぼ無人とも云える阪神競馬場の馬主席に、マスターの怒声が響き渡ったのはこの日曜日の事。
JRAが無観客レースを決定したものの、さすがに馬主さんまで締め出してはいけま〜と、出走馬主とバッチ持ちの同伴者2名までは可のルールが決められた。
金はなくても、競馬絡みの知り合いだけは充実しているマスターも、おっとり刀で阪神競馬場に参陣。
それはいいのだが、あの広い馬主席にざっと見たところ10名程度と云うのだから、寂しさも極まれりである。
馬主さんが朝、買い込んで来てくれたケンタを頬ばりながら、何故か売っているビールやハイボールをグビグビとドリンキングするも、ウラ寂しさは免れない。
競馬場、随分と小綺麗になっても、とどのつまりは鉄火場である。
人々の欲や望みの気が充満していないと、単なる箱とグリーンの芝生がある施設でしないのを実感したそうな。
『中山記念』は、馬連の3点買いを敢行したが、大嫌いな某ジョッキーが勝って、僅かもうけは6千円と、メルカリでトイレットペーパーを買えば吹き飛ぶような金額でしない。
「マスターさん、おめでとうございます。」レースが終わって帰宅すべくテクテク歩いていたマスターに繋ぎを入れたのは、熊本天草出身○原さん。
「何がめでたいんなら、あったらもんクリネッ◯ステッシュをワンカートン買ったらお終めぇだ。」
「今、どこですか?競馬場に行ってるんじゃないかとK君と噂してたんですよ。グリーンチャンネルが無料なのはいいですが、家では全然力が入りませんね。厄払いにマスターさんの家ですき焼きでも食べませんか?」
「好きにすりゃ〜いいじゃん。材料を買って来いョ。安もんの肉はダチカンゾ。それとシャンパンが飲みてぇ。ヴーヴのイエローでいいから持って来い。どうせ払いは銭をしこたま持ってるKだろう。」と槍投げ状態。
誰もいない海ならぬ、誰もいない競馬場。
何とも切ない日曜日となった。