北新地競馬交友録

希望

『希望』by 洋子岸

希望という名の あなたをたずねて
遠い国へと また汽車にのる
あなたは昔の 私の思い出
ふるさとの夢 はじめての恋
けれど私が おとなになった日に
だまってどこかへ 立ち去ったあなた
いつかあなたに またあうまでは
私の旅は 終りのない旅

希望という名の あなたをたずねて
今日もあてなく また汽車にのる
あれから私は ただひとりきり
あしたはどんな 町につくやら
あなたのうわさも 時折聞くけど
見知らぬ誰かに すれ違うだけ
いつもあなたの 名を呼びながら
私の旅は 返事のない旅

希望という名の あなたをたずねて
寒い夜更けに また汽車にのる
悲しみだけが 私の道づれ
となりの席に あなたがいれば
涙ぐむ時 その時聞こえる
希望という名の あなたのあの歌
そうよあなたに また逢うために
私の旅は 今またはじまる

希望と聞いて、すぐにパンドラの箱の神話を思い浮かべる人は、学生時代に少しだけ真面目にスタディーに励んだ、ごく標準的な人である。
神ゼウスが、まだ人間というものに男性しか存在せず、災難というものが無かった世界に、すべての悪と災いを封入した箱を持たせてパンドラという名前の最初の女性をおくる。
パンドラは地上に着くと、好奇心からその箱を開けてしまう。すると、中に入っていたあらゆる災いが人間界に解き放たれる羽目に。
彼女はあわてて蓋をしようとするが、「閉めないでください!私がいます。」と箱の底から声が。
それは希望であったと云うギリシャ神話である。

バット!言葉の魔術師、競馬を愛し続けた寺山修司によると、希望の解釈がぐるっと反転する。
「人類が最後にかかる、一番重い病気は『希望』という病気である。」
競馬に淫している人は皆、多かれ少なかれこの病に侵されている。
馬主ならば、「芝は合わなかった。ダートなら勝ち負けだ。」
「屋根が下手くそでまともに競馬をしていない。ルメールが乗ってくれたら勝てる。」
「前半のペースが早すぎだ、あれじゃ〜前に行ってるうちの馬も持つ訳がない。」etc。

馬券愛好家も当然の事ながら負けてはいない。、「○○の野郎が斜行をして前をカットしゃがるから、俺の買っている馬が被害を受けた。」
「マイナス3キロに飛びついて、減量を乗せたら、あったら不細工なレースになるのは必然ョ」
「3連複なら大当たりなのに、3連単にしたばっかりに順番がズレて馬券がゴミになった」etc。
どちらもある意味病気で、それに気付いている人間は少なくないが……….。
病気だと思いつつも、行く道を行くしかないのは厳しい事だが、それが馬好きの人達の宿命なのかも知れない。

『第4コーナーのカーブから直線!前は競っていますシュテルクスト!ウォーターラーテル!2頭の追い比べが航続を大きく引き離す!」
「友!何をしとるなら!行け!行けったら馬鹿野郎!前が残っちまう」半狂乱でグリーンチャンネルに向かって絶叫するマスター。
「抜けた2頭の後ろからエスパー!前がドンドン離れて行く!外からキングダムウィナー!リトルクレバー!シテェルクストが半馬身リード!2番手はウォーターラーテル!3番手にリトルクレバーが上がったか!シュテルクスト!余裕のゴールイン!」
1着 シュテルクスト 松山J
2着 ウォーターラーテル
3着 リトルクレバー 北村友J

「今日の後半は気のある馬がいねえ。速攻で決める!阪神1R、友君が跨る京都馬主協会お偉いさんの愛馬、リトルクレバーはこんな所でスキップしてる場合じゃねえだろう。発表!枠連!1枠から流す。相手は佑介のキングダムウイナーの4枠、祥嗣のウォーターラーテルの7枠、隼人のザフーンと、ダートならデットーリクラスで常に怖いジェントル幸のエムテイフラッシュの同居した8枠に平に3万。これまたダートの鬼!若武者弘平のシュテルクストの6枠に1万と5千。有馬の払い戻しを預けてあるだろう。全額いてこまそうじゃんか。大した儲けにゃ〜ならねえが、若武者弘平が突っ込んでくりゃ〜チイとはいい年玉になる。」と結論付けていたもんだから一たまりもなかった。

「5万でも儲かりゃいい。つつましやかな希望だったのに北村友の野郎が木っ端微塵に吹き飛ばしやがった。暮れでみんなソワソワしてるんだ。前が早くなるのは想定内で、ぐわっし!ぐわっし!と進出しなけりゃ〜ダチカンだろうが。あ〜あ、暮れのこの時期に10万がとこヤラれると堪える。どっかに当たりの宝くじでも落ちてねえかな。10億とは云わねぇよ。ミニの5千万がありゃ〜余裕で凌げるのにョ。」だったらしい。
マスターの場合は希望じゃなくて妄想だ。
来年は、もう少しシャンとせんかい!

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来年度も、何卒、宜しくお願い申し上げます。